case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

2012,8,5 PM11 【映画録『シリアナ』】

シリアナ』 原題:Syriana
アメリカ映画、2005
監督・脚本/スティーヴン・ギャガン

シリアナ [DVD]

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最近常に頭使いながら観るタイプの映画減ったなあとか思いながら。いや引きが悪いだけかもしれない。
最初はミステリとかサスペンスのつもりで借りてきたのだけれど(実際そのジャンルの棚にあったのだけれど)最初の10分でどうも毛色が違うようだと気がつき30分ほどで守備範囲外と気がついた。石油開発を巡る群像劇?極端なまでに緻密な群像劇。主格人物ごとの話の一つ一つはドキュメンタリーというか、伝記的だ。だから別に悪をぶっ倒したり真実の愛に目覚めるお話ではない。
あまりに疎いジャンルなので他者の文を引用する。
超映画批評『シリアナ』60点(100点満点中)
尊敬する超映画批評様はこのようなことを言っているが映画の作り自体もかなり間口が狭い。これが2005年の映画かとちょっと驚くくらい昔の映画の文法のようだった。何が起こっているとか何をしているとかしたいのだとか、すべて視聴者が情報を拾い上げて取捨を選択して繋ぎ合わせて類推しなくてはならない。ほぼ常にだ。現代の映画フリークが手を出しても氏の言うように十二分な知識がない者では物語の概要すら掴めない。いや、知識としては古いものだからかじった程度のものを駆使して理解の範疇に収めようとするのが大半だろう。挙句映画としてはナンセンスとか言い始めそうだがそれは実のところ間違いだ。元々映画というものは視聴者の処理能力に合わせて情報量を的確に制限しなくてはならないという絶対のルールはない。尺に対して積載過多かどうかという問題もこの映画はクリアしていると言ってよいし、そのことはこの手の映画においては「観やすさ」では計れないものだ。まあ観やすくないので楽しめないというのも当たり前の話だが、そのへんは氏の意見に舞い戻って、シリアナというタイトルだけでピンとくるレベルで見識あるといえる人間だけがニヤニヤするための映画だった、ということらしい。
どうでもいいかもしれないが一つ個人的に面白いと思ったことは、作中で誰も一度も発砲をしていないことだ。銃はもちろん出てくる。あとミサイルやら爆発やらはあったがまあご愛嬌。実は弾を買うお金がなくてというジョークが監督の口から聞けたらと思う。社会派映画として駆け引きのリアリティを突き詰めれば、一発の弾丸がどれほどの重みを持つのか自覚しないわけにはいかないはずだ。また力を持つが使わないというのはCIAの歴史背景にある冷戦をも象徴する。攻撃とはあくまで銃を突きつけ撃鉄をあげるまでのことを指す。引き金を引くことは滅ぶことだ。思えば最初のシーンからそれはあったし、全体を通しても陰に日向にそのリアルは敷かれていた。唯一破ったのは最後のミサイルだ。だがあれは是正されなかった悪が闇に落ちていく未来を思わせ、やはり滅びを示唆している。そして出稼ぎの息子はまさに無益という名の滅びの本質を見せてくれた。