case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

2012,8,24 PM11 【映画録『シャッターアイランド』】

朝映画は功を奏しているのかよくわからない。早起きのモチベーションにはいいが早起きのために寝不足になってる気もする。寝つきが悪すぎるのもあるが。
てか二本観たけど今日書き切れるかな。


シャッターアイランド』 原題:Shutter Island
アメリカ映画、2010
監督/マーティン・スコセッシ、脚本/レータ・カログリディス

シャッター アイランド [DVD]

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叙述トリック系ミステリ?最終的にストーリーの解釈が人によって分かれるタイプの。
まあ一番妥当性の高い解釈へ最終的には収束するように作られていはいるが、一応真相を知るには自分で類推する以外の方法がないため一般の解釈には幅ができる。とりあえずその、一番妥当性の高い解釈として概ね同意見の解説を見つけたので、解釈に関してはそちらを参照してもらえれば十分である。ネットって便利ね。
ただしこちらネタバレが大前提なので一応閲覧注意。とはいえこのブログもある程度のネタバレはご愛嬌なのだが。
シャッターアイランド | :映画のあらすじと詳しい解説、批評
彼自身が導き出した本作のテーマを常に引きずって解釈している点と、ラストシーンについて記憶違いをしている点が気にはなるがまあ評者を評しても仕方がない。無断でたたき台にするのもおこがましい。解釈そのものは一部を除いてほぼ一致していると言っていいし。
とにかく詳細な解釈は上に任せておいて、ミステリとして、そして映画として本作が面白かったかどうかについてこちらでは感想を述べていく。先に述べたとおり、本作は別解釈の可能性を残しながらも一つの妥当性の飛び抜けて高い解釈が確立されるように作られてはいるのだ。これが妥当性において同等に並び立つ解釈が複数ある作品ならばいざ知らず、そうでない本作は解釈に関して議論的に考察を進める気にはならない。感想の前提とする解釈はリンク先のもので十分である。
前置きが長くなった。先に映画として面白かったかについてだが、なんだろう、もしかしたら後で述べるつもりだったミステリとしての面白さとのジレンマなのかもしれないが、ミステリとしての面白さを成り立たせるために非常にお粗末な映像効果が使われていたような気がしてならない。いやそれが妄想だとして、なおさら映像効果面での低予算感は首を傾げたくなるものだったといえる。実際低予算だったのかというと製作費80億ドルだ。微妙といえば微妙と言えなくもない。しかしギャング・オブ・ニューヨークマーティン・スコセッシがこの程度の映像感覚だっただろうか。と思い出してみれば、どちらかといえばあれもセット主義だった気もするのでまあ合成に頼るとこの程度なのかもしれない。
映像よりも展開に目を向ける。こちらは各所から好評を得るだけあってまったく飽きない。そもそも物語の解釈・解答を探しながら観る必要のある映画だ。上映前にそう喚起する親切心を配給会社が形にしてくれているがそれがなくても考えながら観ざるをえないようにできている。初視聴の際に私が脳内で主な争点としたのは、端的に言えば誰が味方で誰が敵なのかという点である。もう少し正確に言えば、人物相関図を随時更新しながら視聴していたわけだ。これは結末の話になるが、本作の人物相関図は最後の最後まで完成しないといえる。完成しないというか、確定しない、決定的とならない。主人公のプロフィールさえそうなのだ。読解・理解力が試されるとはいえ、そうでなくても解釈が分かれるのは当たり前といえよう。
ただし、飛び抜けて妥当性のある解釈には半ばで思い至ってしまうかもしれない。これには解釈以上の個人差が出るとは思うが、ひとまず、言ってしまえば全員が敵でした(重大なネタバレにつき反転)という結論はなんというか「裏切ってほしかった予想」ではないだろうかと思う。一応、警備隊の「お前の目に咬みついたら〜」は上手いブラフだと思うし、その「結論」だけで最終的なストーリーの解釈に到れるわけではない。が、最終的な解釈において争点となるのは、一見人物相関図全体のようであるが、実際突き詰めてみると、更新の対象となるのは相関図の中でも各人物のプロフィールにあたる部分のみである(ドロレスやレイチェルは過去の人物であり、そういったものは思い出せる人物=レディスのプロフィール中に組み込まれる、というのが私の考え方である)。つまり、相関図の矢印や線にあたる、すなわち「関係性」の、さらにその中でも「色」(つまり関係の名称ではなく本質と言いたいのだがうまく表現できないww)においてクライマックスで裏をかいてもらえなかったのは、若干ながら残念だったと思う。そもそも個人的に、最後に個々とした設定ばかりが明かされるタイプのミステリが好きでないのかもしれない(まあ、その明かされる設定がぶっとんでいる場合と、本当に類推できなかった、もしくは複数の予想が同等の妥当性でもって連立していた場合は別だが)。おそらく私の理想とするどんでん返しというのはデヴィッド・フィンチャーの『ゲーム』のような、よくよく見ると主要人物のプロフィール自体は変わっていないというタイプなのだろう。まあ設定の解明に作品自体が終始しているミステリが合うという人もいるだろうが、とりあえずせめて、先にカッコ内に書いてしまったが、設定に関して同等の妥当性で並び立てる解釈が二つ以上あると言えるような結末にしてしまってもよかったのではないだろうか、とも思うのである。こういう指示をもし与えられて作品を作るとしたら、最後にさせた解釈すなわち物語全部と決定的に矛盾するファクターを放り込んでめちゃくちゃにしてしまうという、安っぽいホラーのような手法が思い浮かぶが、それこそ『ゲーム』のような作品でないと本当に安っぽい何かに成り果ててしまうので難しいところである。何よりアシュクリフ云々を出してまで語ろうとしたテーマ性が薄っぺらいものになりかねない。ジャンル的にそんなテーマ性を籠めるような作品か、あっても視聴者がそんなところに注目するだろうかと、上のリンク先の記事を読んだ時も思ったが、スコセッシ監督ならそこは外せないのかもしれない。だとしたらミステリとのジレンマだとも言える。
いつのまにかミステリの話をしてしまっていたが映画としての話に戻そう。もう展開や解釈やテーマ性には触れず、演出の話にまで戻ってみたい。映像感覚がどうのと言っていたが、それとはまた別に演出に関して非常に歯がゆいものを感じたのだ。触れないといったばかりで展開の話に戻るので怒られればいいと思うが、先に書いた通り本作の展開というものは言われずとも考えながら読み解きながら観なくてはいけないようにできている。確かにそのこと自体は秀逸と言えるのだが、観客に対する牽引力と言えるものがそういうミステリ性(謎解き性とでも言おうか)にしかないのがもったいないように思った。というのもこの作品、演出面においてホラーとの親和性がかなり期待できるのだ。
そもそもホラーミステリやサイコホラーというジャンルがあるくらいなわけだが、本作のトリックの基盤は精神病であり、ガジェットとして妄想や幻覚やトラウマや悪夢があり、また舞台は精神病棟を兼ねた監獄である。主人公は情報的に孤立してその不安に襲われているし、周りの人間は全員が全員悪魔か妖怪に見える。結末を前提にすれば主人公自身さえいろいろと不確かなのだ。はっきりと言おう。ここまでお膳立てしておいてホラーしないとは何事か。
スコセッシ監督の作品にそのような方向性がないのは知っている。が、やはり実物を見る限り、ホラーできるはずのところでホラー的演出がない⇒何か中途半端でもどかしい、という感覚に見舞われる。ドロレスなど、塔で出てきた時点では幻覚とわかりきっているが、ノイスの監獄に出てきたときなどはまだゴーストそのものだ。夜のアシュクリフで解凍(笑)されたレイチェルらしき少女がむくりと起き上がる悪夢にもホラー的な何かを期待させられた結果の肩すかしである。もっと、こうっ、できるでしょうがァッ!と心の中で喚かされるのでもやもやが溜まり続ける。陰影にこだわりのない監督にそういう期待をすること自体が間違っているのかもしれないが、少なくともこのホラー的演出によって作品全体の雰囲気が損なわれることはないはずだし、俗っぽい楽しみを増やしたからといって根がしっかりしていれば作品が薄っぺらくなることもない。むしろ単純に考えれば、根をより深く内包することで文字通り深みが増すのではないか。ジャンル詐欺になりはしないかとも言われそうだがそれは配給が工夫しなくてはならないこと。また表面的なホラー性にばかり気を取られて謎解きに集中できなくなるという意見も出そうだがこれこそお門違いだ。本当に謎解きしか見るものがないのでは、おもちゃのパズルブックとなんら変わらないだろう。テーマ性があるのならそれは言いすぎだが、はたして謎解きの後でテーマに至らせるだけの牽引力が現状あるだろうか。否ならばその現状は、総合芸術として、並びにエンターテイメントとしてどうなのだと問うてみたい。何よりそのテーマとやらは、人間の精神の妙という、下手なホラーよりも恐ろしいかもしれないものなのだから、当て馬か咬ませ犬として、下手なホラーを同居させる有用性はあったのではないだろうか。
面白さについてはそんなところ。何か謎解きしかねえみたいな結論になっているが役者を評価している人間は怒っていい。ディカプリオは流石の貫禄だがマーク・ラファロベン・キングスレーの仕事ぶりも主役を飲む勢いだった。ミシェルは鬱の演技が一番かわいかったな。まあタイプはモーティマーさんなんですけど。個人的にはジョン・C・リンチもいい男。ジャッキーはダーク・シャドウに期待している。


いかん。『ザ・ウォーカー』も観たのだが時間切れである。こちらはまた次回。明日は当番なの。