case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

2012,10,30 PM10 【映画録『美しき運命の傷痕』】

美しき運命の傷痕
原題:L'Enfer
フランス・ベルギー・イタリア・日本合作、2005
監督/ダニス・タノヴィッチ、脚本/クシシュトフ・ピエシェヴィッチ

美しき運命の傷痕 [DVD]

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わぁい、昼ドラ。まおう、昼ドラだいすき!
んなわきゃねえ。しかしわかっていて観た。とりあえず、邦題と日本語での触れ込みは嘘ばっかりだったよ。いやまあ原題も「L'enfer」=「地獄」で気取りすぎて名前負けじゃないかと、観終わった後でも思ったけれど、邦題の痛々しさには観る前からものが言えないしふたを開けてみれば「運命の傷痕」は抜粋のかたまりでなんでまたそれに「美しき」なんて付けちゃったのっていう。諸説考え得るがやっぱり痛々しさの方が先に立っていたたまれない。
この度は我が国が大変なご迷惑を、っていつまでも言っててもしょうがない。中身はどろどろというか、恋愛やや夫婦関係やらで揃いも揃って泥沼のた打ち回ってる三姉妹が結局不幸に陥るというわけでもないが救われないお話。気取りすぎだとしても「地獄」というタイトルは充分的は射ている。それぞれの愛が根差すやり場のない不満の地獄。あらすじは、男子生徒に手を出したことを告発された父親が自殺(wikipedia先生には事故って書いてあったが)しちゃったことで三姉妹がトラウマ抱えたまま大人になったら全員恋愛関係で苦労するようになってたというもの。しかも実は父親は無実だったということが最後にわかってしまう。これと鑑みて冒頭に出てくるカッコウの雛が何のモチーフだったのかはよくわからないのだが、少なくとも途中で出てくる女神メディアの話はあからさまに中核だろう。これと大学教授の「運命か偶然か」の講義を合わせれば概ねのテーマは読み解ける。そして結論として「運命怖い」に至る悲劇。中二病だからアカシックレコードとかは好きだけど、ロマンチズムからのガチ運命論や運命至上主義はあんまりピンときそうにないね、現代人。なにしろ「運命はピタリとはまって美しいが、偶然の概念や確率論は無機質でくだらない」という論理だもの。理数的に見れば後者の方が美しいとか反論が来そう。
ドラマそのものは嫌いじゃないがこの作品にある哲学そのものを理解できなければいささかチープか。そもそも恋愛なんて非日常から大きく逸脱しようがないが、結構突発的なご都合主義くさい展開が時々あるのはやっぱり「運命」というファクターをガジェットまで昇華するためのものだろうか。案外あからさまに啓示的なもの(フラグ)には従順でなかったりして観客との間に微妙な距離感を保ってくるのが憎いといえば憎い。
本作の表面的なことで特徴的な点といえば異常に多彩なカメラワークだろう。決してトリッキーで冒険的ではないのだがゆえにしたたかに確実に効果的な角度、奥行き、明暗、ゆるやかなパンと鋭い尺取りでもって次々に攻めてくる。やたらと顔のアップが多くてフランス映画らしくない点も面白い。映像自体は落ち着いているのにフィルムには活力がある。そういう見せ方をしてくるのは監督が情熱的である証拠だろうか。
またキャスティングの妙でも楽しめる。とりあえずエマニュエル・ベアールカリン・ヴィアールマリー・ジランの痛々しい残念美人っぷりを観られるだけでも本作は珠玉といえる。二児の母にして夫の不倫から嫉妬に狂うソフィ(エマニュエル)はめちゃくちゃ怖くてエロいし、異性が苦手なセリーヌ(カリン)は終始八の字眉で全力疾走したと思ったら自意識過剰な童貞みたいにおどおどしながら自発的に脱いでベッドで待ってるし、アンヌというかマリーに至ってはあなた三十路なのになんで女子大生やってるんですか!!??ていうか違和感ねえ!生足ピッチピチでミニスカ似合いすぎなんですけど?!表情も動きも若干幼い演技で完璧なんですけどぉ?!あとはキャロル・ブーケが老いた母親役だがノーメイクだと小耳にはさんで衝撃を受けたり(あ、でも回想に出てきた中年の頃の母親のことかも)、ジャック・ガンブランって俳優初めて見たけどセクスィーねとか感心したり。個人的には『コーラス』以来のジャック・ペランでああこれは若い子落としちゃってもしょうがないとか妙に納得していた。ていうかあの対比がマリーをさらに幼く見せてるような。
ちょっとカメラワークが心地よかったのでこのタニス・ダノヴィッチ監督の『ノー・マンズ・ランド』には触れてみようかな。本作と違って自分で書いた脚本でカンヌ脚本賞というのも気になる。
ちなみに、日本も製作関わってるってどのへん?と思っていたが、セリーヌの家の廊下に筆で何か日本語を書いた掛け軸みたいなものが飾ってあったよ。そういうセット方面での協賛だったのかしらん。