case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

2012,12,18 PM7 【映画録『デイブレイカー』】

時間がない時間がないと言いながら三日ほど無意味に使い潰した感。いや遊んですらいないんだけど。時間をかけてもかなわなかったり間に合わなかったりすると、こうね、虚無感がね、すごいね。

そして後ろ倒しにされた計画には開き直りが見え始めるのであった。嗚呼……。


デイブレイカー
原題:Daybreakers
アメリカ・オーストラリア合作、2008
Daybreakers
監督・脚本/マイケル・スピエリッグ&ピーター・スピエリッグ

デイブレイカー [DVD]

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ナイトウォッチ、デイウォッチのシリーズだと勝手に勘違いしていたのはともかく。
吸血鬼になる感染症パンデミックして人類の9割が吸血鬼になっちゃった近未来世界が舞台。人類減りすぎて食料(人血)不足で社会がやべえ!っていうのが物語の主な骨子。食われる人類側も黙っちゃいない。そして主人公は人類の味方をしたがる吸血鬼。
人が吸血鬼になっちゃった原因が感染症パンデミックってあたりがいかにもアメリカ映画だが、それで誕生する《吸血鬼》というものがやたら古典的な設定(日光を浴びると焼死、心臓を杭や矢でひと突きにされると死ぬ、咬まれた人間も吸血鬼になる(粘膜感染?)など)に準拠しているあたりや、主人公が人血を飲みたがらないキャラであることなどは、どちらかというと日本の漫画やラノベチックでいささかちぐはぐな印象を受けるが、それがまたインディーズのような趣があって心地よくもある。まあ実際脚本は90分枠のB級なので、そういうところはご愛嬌と考えるべきなのだろう。
全人類が吸血鬼になって純粋な人類の方が異端になった世界はどうなるのっと。といった一種のパンクにまで手が伸びているのかといえば、そういうわけでもない(ヴァンパイアパンクとか面白そうね)。せいぜいそのへんのテーマは、「吸血鬼になっても人は人やったね」があるかないかといったところで、主人公や人類の立ち向かう相手はすでにひっくり返ってしまった世界というよりも、食料(人血)で商売やろうとしている悪の企業だ。たいへんアメリカ映画らしいが、アクション映画レベルのスペクタクルを期待していても肩透かしを食らう。序盤で世界設定を理解したら後は映像を楽しめばいい。それもVFXによる美麗な映像効果と特殊メイクをだ。アクションや爆発もないに等しい(それを期待してしまっていたのは俺の中に的外れなシリーズと関連付けてしまった時の名残があっただけかもしれないが)。
中盤以降の顛末までネタバラシ【閲覧注意】してしまえば、主人公は人間に協力することになって悪の企業からは追われる羽目に。さらに人間に戻る(感染症を治療する)方法を発見し、人血不足という名の食糧難をどうにかするよりもみんな吸血鬼をやめよう、という方向に話が動いていく。実質世界が再びひっくり返されるという方向で物語には一応の決着がつくわけだ。もしこれがしっかりしたSFならば、いくらか回り道もしないうちにそこへ直行してしまうのは正直何も面白くない。変容を御すために変容を元に戻すというのは進化論を見るロマンチズムの目からしてもナンセンスだ。こちらもSFではないが、近未来もので異世界ファンタジーに近いもの。パンデミックが起こる段階でならともかく、出来上がってしまった世界で救済手段が“治療”と来るのは、なんというか夢がない。
まあ「人造血液で大儲け」「さらに“天然血液”をプレミア化して濡れ手に粟」という大企業のたくらみ(特に後者)を非人道的であるとして90分でくじいたり、血液飲みたくない主人公が禁断症状で野生に還ってしまう問題をソフトに解決したければ、“治療法発見”というのが確かに手っ取り早かっただろう。ボウガンを撃てば確実に心臓に当たる世界観である。あまり目くじらを立てていてもしょうがない。