case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

2013,3,3 PM5 【映画録『ケース39』】

ケース39 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

ケース39 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

このブログのタイトルとは一切関係ございません(笑)



『ケース39』
原題:Case 39
アメリカ映画、2009年
監督/クリスチャン・アルバート、脚本/レイ・ライト


今年最初の当たりホラー。思わず「ぃよっしゃあッ!」と快哉を叫んでしまった。
映画全般でもリトルランボーズ以来だったからね、普通に面白かった映画って。秀作というほどではないにせよ十二分に良作です。

【あらすじ】
実の両親にオーブンで焼き殺されそうになったリリー(ジョデル・フェルランド)を、児童ソーシャルワーカーのエミリーが救出する。二人は一緒に暮らす事となるが、その日の境にエミリー(レネー・ゼルウィガー)の周辺で不審死が発生する。Wikipedia


エスター?いえす、エスター。導入は。
厳密にはエスターではない、とネタバレ不審と低俗なパクリ疑惑のためにも言っておかなくてはならない。エスターとは違う。ただとにかく、女の子を引き取ったらワケあり物件だったというお話。和ホラーでは見ないが洋ホラーらしいといえばらしい。
正直私なんかはまったくの他人事というわけでもない。今のところお迎えしている娘たちはいわゆる生まれたてさんばかりだが(倉庫に2年以上孕まれていた子もいるが)そのうちどうしても仲間に加えたい出戻りの子が現れないとも限らない。人形の出戻りなんて供養候補もいいところじゃないですかヤダー!なんて言ったら玄人の方々には怒る人もいそうだが実際そういう気味の悪さで手を出すのが憚られているのだいやもう増えないんだってだから!(必死)

まあ人形と違って人間で“その手”のワケあり物件なんてあるわけない。ワケありと言ったらその子の人間性の話になってくるはず。
ところが、あらすじにもある「実の両親」、登場した時点でわかるが、これが憔悴してるなんてものじゃない。顔真っ白でやつれきって目はギンギラギンだ。父母ともに一週間は寝てないんじゃないかって顔で、娘の両側に座ってソーシャルワーカーを睨みつける。
エミリー視点で何もわからない状態で見れば、両親はクスリでもやっているんじゃないかと疑うことだろう。だがこちらはホラーを見ている観客である。この両親は、ひと目見て、ヤバい。いや、両親がやばいのではなく、彼らの家が、ヤバい。

ここで家の中の何がヤバいのか。某ノーマルアクティビティだったら「家の中に“何か”いる」とくるところだろうが、この映画の場合は決まっている。両親はエミリーを睨みながら揃ってどこか何か別のものを警戒しているみたいだ。スクリーンには4人しかいない。
しかも、児童相談所に呼び出しを食らった両親は、さすがに顔はどうにもならなかったようだが、家族そろってこぎれいな格好をし、娘にアイスクリームまで持たせて何の問題もない家族を演出しようとする。娘が一人でソーシャルワーカーと面談する際は外からにらみを利かせて告発を封殺する。そう、告発されるようなことはしているのだ。だが、あくまで娘を手放すつもりはないという姿勢を見せている。いや、ここまで見れば“手放すわけにはいかない”という、ある種の使命感に駆られているようにも見えるだろう。
ただしこの時点では、その使命感自体が両親の妄想の産物に見える。それがエミリー視点だ。異常な両親によって一人の少女が家に縛りつけられ、冷たく扱われている。事実、両親の顔色は観客視点でも眉をひそめる異常さだ。娘そのものを恐れているのか、それにまつわる何かを見ているのかまではわからない。

ひとまずこの時点では恐怖の本質はまだ掴めない。児童相談所側も、虐待の決定的証拠は掴めずいったん手を引くことになる。ただ、エミリーはこっそりリリーに近づいて、その口から両親が彼女に殺意を抱いていることを聞かされる。殺されそうなんて子供の誇大妄想にも思えなくはないが、それに近いレベルでリリーの家族には何か問題があると考え、エミリーは独自に動いて彼らを監視し始め、リリーに自宅の電話番号も教える。
さあ、そしてあらすじにある問題の事件だ。両親は、眠っているリリーを抱え上げ、オーブンに閉じ込めて焼き殺そうとした。本当に殺そうとしたのだ。しかも、わざわざ、眠っているリリーを、オーブンに閉じ込めて、焼き殺そうとしたのだ。

殺意に駆られているなら手早く殺す方法はもっといくらでもある。相手は子供だ。だが彼らは、あえて寝込みを襲い、生き物を殺す方法として最も確実な方法で殺そうとした。立っている少女の首根っこを掴んで胸にナイフを突き刺すのではなく、そんな面倒で手間のかかる方法を選んだ理由は何だったのか。

今回はネタバレなしで行く。
この映画のすごさはホラー的な演出や撮影の技術よりも、その密度にある。90分映画ということを知らずに借りてしまったのだが、序盤の山場までですでに一時間も観たような気分にさせられた。飽きたということではなく、そのぐらい濃厚なために集中して観ていたからだ。一時間というのが大袈裟だとしても、ここで半分くらいかな、とメディアプレイヤーのシークバーを出現させた時の私の驚きはそうそうあるものではなかった。なにしろ3分の1にも至っていなかったのだ。個々の演出の密度ではなくその手数と、その連発ぶりを苛烈なものには感じさせない構成。すなわちそれは脚本の密度だろう。正直その時点で良作であることが確定したようなものだが、さらにホラー的な緊張感は、序盤がひと段落することでいったん弱まり、弱まったと思わせてじわじわと再び盛り上がっていく。むき出しになっていくのはまさに、序盤にすでにあった異常さの正体である。

というか、中盤で一回ホラー性を思い切りむき出しにしてくる。どことなく生理的嫌悪を催す雰囲気が全体にあるのだが、そのシーンだけは視覚的にくるものがある。この作品が全体的に静かな怖さを持つことからしても浮いている過激なシーンなのだが、この塩梅が憎い。ついにきた!と中盤も少し後ろのタイミングで観客に思わせるのだ。さあ、次はどうなるかと客としてはワクワクして待ち構えるのだが、再び静かに張りつめた空気を醸し出し始める。焦らされながらも緊張感だけ持続しているのでこちらは目を離せなくなる。脚本の密度は衰えず、待ち構えているうちに話はどんどん進んでいく。パターンは存在しないので展開は読めない。この状態を“ハマっている”と言わずに何と言おう。

逆に90分だからこそよかったというのもあるかもしれない。最後15分程度だがエミリーがブチ切れてからの展開はホラーやサスペンスというより完全にスリラーだ。そして脚本の時間的密度(体感時間)はそれまでのさらに倍くらいに膨れ上がる。金魚鉢を持ち出すあたりでシークバーを出してみればいい。ここからどうまとめるんだ!?とまったく終盤の気配がしないことに驚くことだろう。クライマックスには違いないが、よもや尻切れトンボではあるまいな、と戦々恐々とするかもしれない。まあそこまで観てしまったのならもう最後まで観るだろうから皆までは言わないが、あえて最後まで見ることをお勧めしよう。すなわち、とくとご覧あれ、だ。

それにしてもジョデルちゃんである。おそろしい。いや本作での役がではなく(そちらもだが)子役としての才能と実力の話だ。
サイレントヒル』映画版アレッサの面影も発揮ししつつ、マイバイブル『ローズ・イン・タイドランド』で見せてくれる役者性にちょっと意味わかんないレベルで磨きがかかっている。本当にちょっと意味わかんないぞこれ。何よりサイレントヒルシャロン/アレッサで陰と陽のような一人二役をやってのけたわけだが、本作で魅せてくれるのはその完成版のような人格の二面性だ。ていうかやっぱり子供の演技じゃないよなにこれ超こわい!撮影当時12歳!?(公開時16歳)邦画でこんな子役見たことねぇぇぇよ!


これである。
子役としての天才性は大人になると消えてしまうというが、現在18歳になってしまった彼女はどこへ行くのか。最近3Dストップアニメの声の出演を担当したとか。9歳の彼女(ジェライザ・ローズの時)から応援していると言っても間違いではないので、大人の女優としても花開いてほしいところ。

ところで、『エスター』も以前観たけど、あれも久々に怖いと思えるホラーだった。こっちよりもハラハラする面白さが強いかもしれない。怖さの種類が違ったと思うので今一度見比べてみるのもいいかな。ただし個人的にはジョデルちゃんの方が断然かわいいやごめんなさいごめんなさいいしをなげないで。

エスター [DVD]

エスター [DVD]