case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

2013,6,24 AM2 【映画録『スマグラー おまえの未来を運べ』】

スマグラー おまえの未来を運べ』
英題:SMUGGLER
ワーナー・ブラザーズ映画、2011年
監督/石井克人、脚本/石井克人山口雅俊&山本健介
映倫:PG12

「望まぬ日常に埋もれるカスにはなるな」
誤解を気にすれば本望であれば日常に流されるのもありという余裕は残されている。ただ日常に抗えと言っているわけではないし、飲まれることなく流れに乗れるならそれもいいだろう。もしもただ流されるだけの人生を送るなというアメリカンドリーム的なコピーだとしたらこの映画、流されっぱなしやないかい!という話になってしまう。
主人公の砧(“きぬた”と読む。役者・妻夫木聡)はパチスロ三昧の典型的なクズニートフリーターと言っていたがバイトをしている気配もない)。ヤクザ風のチンピラに勝たせてやると言われてホイホイついていってペコペコ言うこと聞いた挙句言いがかりをつけられて借金させられるほどのヘタレっぷり。借金を返すために借金取りに仕事を斡旋してもらう体たらくで、紹介してもらった仕事はいわゆる裏社会の運び屋助手。積荷は死体が当たり前。しかし今度ヤクザの家まで運べと言われたのは生け捕りにされた組長殺しの殺し屋さん。に、砧のポカにより途中で逃げられる!元役者志望の砧はこの失態の責任を取るため、運び屋リーダーのジョー(永瀬正敏)が殺し屋を連れ戻すまで殺し屋の替え玉を演じる羽目に!期限ギリギリでヤクザに引き渡された砧を待ち構えていたのは、復讐の鬼と化した若頭・河嶋(高嶋政宏)による拷問祭りだった。
チャイナ・マフィアとか絡んできてわりとスケールの大きな話かと思ったらそうでもなく、裏社会の末端を描いたヤクザ映画スケールな映画。漫画原作ということもあってライトなエンタメ作品だがわりと最後まで飽きずに観られたため好印象。妙に最後だけ人情ものクサい感じを出してきたのは邦画の悪い癖だが下手に頭を使わなければ楽しめる。このライトさで馬鹿馬鹿しさの持続するノリなら細かいことにも目をつむってよいはずだ。
数ある興奮要素の中でひときわ異彩を放っているのが高嶋政宏演じる狂犬・河嶋だろう。すでに広く取り沙汰にされているようだが、とにかく高嶋の怪演が目に残る。特に身動きできず反応もできない砧を相手にした実質ソロプレイの拷問シーンは妖怪並みの奇天烈さで得体のしれない迫力を覚える。拷問自体も各種古典的な危惧を取り揃えております状態で観ていてこちらが叫びたくなるほどのもの。インパクトの重ねがけで強烈なシーンに仕上がっている。ある意味このシーンだけ見て満足できればこの作品は正直充分だろう。
個人的なお勧めをいえば、殺し屋・背骨(安藤政信)のヌンチャクプレイをいちいちスローモーションとCGで見せてくれる冒頭からのアクションシーンも馬鹿馬鹿しいインパクトがあって魅力的だ。こここそ漫画チックだがあえてそうすることの面白さがこのあたりによく表れている。またこの時点から「細かいことを考えて観ちゃいけない」というのがわかるので、ある意味親切な構成だ。

↑高嶋演じる河嶋(TVスポットより)。いや誰よアンタ……。

スマグラー おまえの未来を運べ スタンダード・エディション [DVD]

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