2013,12,22 AM4 【映画録17『アーティスト』『愛と誠』】
ほとんど16.5って気分ですけどねえ(;´v`)
お品書き
- アーティスト
- 愛と誠
毎年節分にはMr.ビーンを観るって小粋なジョーク(自分で言う)を実践してるんですけど、
クリスマスには何を観るべきかというのはわりと難問です。
あてつけっぽいチョイスこそ奇をてらってるようでつまんないんですよねえ……。
ちなみに真面目なイチオシは、ホルテンさんかホーム・アローン2です。
case.728の映画録は、ネタバレは「もしもあったらごめんなさい」でお送り致します。
12月13日『アーティスト』
- こんな諧謔が面白くないわけないじゃないか!これぞ約束された傑作に違いない!
- と、やけに興奮気味に観てしまいましたがさすがに勇み足だったようです(^^;)いや、趣旨をよく理解して観ればまったくもって素晴らしい完成度の映画なのですけど、ぼくが謳い文句を見て勝手に欲情したような挑戦的でセンセーショナルな要素は少なかった。どんなのか思い出せないままとりあえず記憶にあったカクテルを頼んだらやたら甘くて可愛らしいのが出てきちゃってアッてなったときのあの感じ。エドワード7世様もアザナヴィシウス監督もそういうつもりじゃなかったんですね、すいません……(´x`;)
- つまるところ脚本はごく普通のメロドラマ。いや、ごく普通どころか、白黒映画時代に腐るほどあったと思われるとっても古臭いメロドラマなんです。そう、「白黒映画の感動を現代に届けたい」という監督の趣旨はまさにそのまんまだったわけです。「あの時代の白黒映画」を追い求めていった先の完成度を現代においてたたき出した、というところに意義のあるめちゃくちゃアカデミックな映画なのでした。ぼくみたいな不勉強者が観てもちんぷんかんぷんなのは当たり前だとしか……。
- ほかのレビューなんかを見ても間違いなく白黒映画ファンおよび無声映画ファン、ファンでなくても造詣の深い人などから見ると絶賛され得る出来栄えなのは確かなようです。まさにアカデミー賞。映像的な引用もたくさん含まれているようでしたし、素人のぼく自身ちゃんと素面で観直して、「あの時代の」無声映画に対して興味をそそられるレベルでもあったわけです。監督の意図は成功している成功だと言わざるを得ません。
- メロドラマ自体も嫌いじゃなければ素敵な仕上がりですし、また、現代だからこそできる映画的な面白味も全くないわけではありません。自分以外のものに音がつくという主人公が見た悪夢は脚本の核を表す意味でも気が利いていましたが、その表現において一時的に“トーキー化”させるというのは、すでにトーキーの普及した時代、すなわち無声映画の終了した時代にこの映画を作っているのだと主張しているかのようで、なかなか皮肉っぽく見えます。
- 外せないのはその年のパルム・ドックをかっさらっていったアギー(劇中ではジャック)。撃たれて死ぬフリをする演技(演技の演技という面白さ)もかわいいですし、火事の時の存在感もすばらしいですが、個人的に一番は主人の自殺を止めようとするときの動きですね。あまりに情動的に動くので、ディズニーアニメの101匹わんちゃんあたりからからトレスしたCGなのではと一瞬疑ってしまったほどです。アギーかわいいよアギー。
- 現代白黒映画といえばミヒャエル・ハケネの『白いリボン』。言ってしまえば自分はあれの印象が強すぎて同じものを本作にも求めてしまったのでしょうね。音や色彩や音楽のうち、何かがそっくりまるごと抜けていても“撮れる”という、劇薬的な証明。分かりやすいレベルではそういうものではありませんでしたが、しかしその可能性を示唆する上ではこのアカデミックな映画も一助となり得るのではないかと考え直します。
12月18日『愛と誠』
- 『アーティスト』からトーキーの世界に戻ってきたこの流れでミュージカル映画を!
- という殊勝な考えに至ったわけではありませんが(むしろくしくも)三池監督作のミュージカル映画という、わりと何言ってんだアンタという印象で『悪の教典』と同じ時期から気になっていた『愛と誠』。ホント、邦画はこの人追ってる限り退屈だけはしません。
- 内容は言わずと知れた漫画原作『愛と誠』。何度もリメイクされていますがしかしミュージカル仕立ては初めてです。中身は昭和後期に隆盛したる不良漫画の筆頭。札付き不良とブルジョワお姉様のロミオとジュリエット。んん?ロミオはむしろ岩清水くんでは……。
- キャラ贔屓が始まると作品贔屓が止まらないんですが、はっきり言ってこの作品は全部面白い!コメディタッチが逃げ腰だなんてとんでもない話です。はずせばそれでおしまいの大博打なんですよ笑いは!
- と熱く語りたくなるくらいには延々ツボってましたね。さすがにツボなんて個人のものなんですけど。とはいえやはりディティールで押さえるところは押さえてきているというのが冷静に観察してみてもわかるところ。ゴリ押しや気軽なノリではなく、まったくもって堅実で慎重な笑いどころが地道に並べられています。
- もちろん堅実なのは笑いだけじゃない。序盤から伏せるようにして潜んでいたシリアスが後半に向かうにつれて徐々に頭をもたげていく、その流れと塩梅もやはり手慣れたもの。シリアスに入っても笑いを忘れない、その置き方を外さないバランス感覚も落ち着いていて流石。シリアスそのものは原作が優秀ですから忠実な脚本である以上面白くて当たり前なのですが、そういう前提で観てもやはり上手にこの映画らしい味付けをしてあるんです。
- いい意味で学芸会とはよく言ったもの。予算が少ないからこうしたとか、まともな俳優を取れなかったからこうしたとか、卵と鶏の順をまるで考えない卑屈な意見ばかり横行してしまう昨今ですが、この映画においてはそんなものは結果論だと笑い飛ばしたいですね。武井咲のお人形みたいな演技もお人形みたいな愛お嬢様にはこの上なくハマる。観ていて心底痛々しかったですがしかし愛お嬢様だからこうでなくては!
- というかキャスティングに関してはこの作品、実際に視聴するとどこを見ても悔しいくらい光ってるんです。「こんなキャストで大丈夫なのか」と思っている人こそ観るべきと言いたいくらい。ぶっきーのアクションのあんまり迫力がないことくらいかしら。と思っていてもアクション中も擦り切れた不良っぽさの方に目が行くので問題ありません。
- 岩清水くううううううううううううううううううん!!!
- ガム子おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
- オッサアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
- 序盤のまだ空気がわからない頃だとミュージカルパートのやたら冗長なところが鼻につきます。フルコーラスはそりゃ長い。これだけは人を選びますねと思いつつ、しかしぼくの場合は途中から、どうしてもあんたらフルコーラスやらなきゃ気が済まないのね、という謎の諦めと共にクセになってきていました。少なくともその“しつこさ”もキャラ芸の一部と取れるようにはなっていたようです。
- また、よく考えると1キャラクター1回ずつまでしかコーラスの機会はないんです。なのでフルコーラスに慣れた後考え直すと、序盤で歌ってしまったキャラクターの分が物足りなく感じてくる。フルコーラスでウンザリしたはずなのに物足りないという謎の中和が発生します。少なくとも同じ歌で二度ウンザリさせられないうちにイイハナシに魅せられて感覚がマヒしてしまう、どころか、キャラクター愛でむしろ懐かしく思え始めるようです。これも計算のうちだとしたら恐ろしい。
- 個人的に一番ツボだったキャラはガム子。次点にするのは非常に惜しいですが岩清水くん。そしてオッサンの前にこども店長は外せないですね。巷ではムカツクくらいと言われる眩しい笑顔のこども店長が、泥だらけの顔で同じ年頃の子どもたちを殴る、蹴る、ノックアウトする!ポケットに手を突っ込んで大人もビビりそうな顔をしている!
- 三池さん、あんたこれわかっててやらせただろ?ww
- あのタイミングでの一青窈もある意味ストライク。当たり前ですが歌のレベルが違うwww
- なんやかんやで原作へのリスペクトもしたたかな本作。ある意味『藁の楯』や『一命』よりも好きかもしれません。
さて、もうちょっとしたら公開予定の『土竜の唄 潜入捜査官REIJI』はフライヤーも予告編も確認してきましたが、
久々にヤクザものでひねりのない三池節。
と言いたいところでしたが、
どうやらヤッターマン前後から進化しっぱなしの三池節で
漫画原作のヤクザものを料理してしまうようです(^^*)
三池さんとヤクザといえば原点回帰のはずなのに、この取り合わせ。
キャッチーではありませんがファンとしては充分ミモノ。
いえ、ミモノという扱いはファンとしてどうなのかと思いますが、
三池さんはこれでいいんです。これがいいんです(笑)
さらに来年秋には漫画『神さまの言うとおり』の実写映画が控えております。
「仕事は来た順に受ける」というのが三池監督のモットーらしいですが
この人のところにはいつもいい意味で無茶な実写化のお仕事が行きますね。
しかも『神さまの言うとおり』は昨今人気と聞くいわゆるデスゲームものの一種。
三池さんでホラーといえば『着信アリ』の印象が強いのがぼくらの世代だと思いますが、
そのせいかデスゲームものが初めてというのがちょっと意外でもあります。
その二つの意味で、こちらもどう料理してくるのかまたミモノ。
本当に退屈だけはさせてくれません(。^x^。)