case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

映画録55『殺人漫画』

今まで通りこうして雑記を入れる余白は欲しい。タイトルに更新日はもう不要そうだけど大見出しに観賞日は入れたい。さて、どう書いたもんですかね(・×・`;)


※case.728の映画録は、5段落前後でまとめる既観賞者向けの参考記事を目指しています。ネタバレ・解説記事ではありませんが、物語の中核には触れているので未観賞の方はご注意ください。


6月11日 殺人漫画

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「入賞したの」

1.


一人ずつ消されていく怨霊・呪い系ホラーといえば、洋画では館モノとか侵入モノとか、わりとシチュエーションで縛る傾向にあるような気がします。ロケにかかる費用との兼ね合いもあるんでしょうか。日本の『着信アリ』みたいに怨霊の方から出張してくるようなのは珍しいようですね。*1

その珍しい方でさらに面白いの、となると、探せば探すだけあえぐだけになります。

B級C級まで含めればたくさんありそうですが、そういうことじゃないんだよぉぉぉっ。

なんて常々思っている昨今に『殺人漫画』ってタイトルが目に入っても、手が伸びるわけがないのです。

邦題つけた人に小一時間問い詰めるべきなのか、こういう消費者心理を作り出してくれた映画業界の事情を憂うべきなのかわかりませんが、結局こうとしかタイトルのつけようがないのに率直に面白かったじゃないですか。

良作との噂を聞かなければ完全にジャケットだけでサヨナラしていたところです。

原題も実は“Killer Toon”で邦題はそのまんまだったんですが、内容もそのまんま。

しかしこの完成度はある意味タイトル詐欺でした。

2.あらすじ ~“再現度”100%のホラー漫画~


とあるウェブ漫画雑誌でカルト的人気を博しつあるホラー漫画作家ジユン(イ・シヨン)。

彼女は最近奇妙な夢を見ては、夢と同じ場所で目を覚ます夢遊病らしきものに悩まされていた。

とはいえペンを持つ手にかげりはなく、その夜も順調に原稿を上げ終え、いつもどおり担当の編集に送信する。

内容は、なぜか編集そっくりの女性記者が、かつてその醜さから自殺に追い込み見殺しにした彼女の母親の霊に切り刻まれ殺されるというもの。

翌朝、その編集は漫画の描写そっくりの状態で発見される。

容疑者も存在し得ない状況に警察は自殺と断定しかけるが、不真面目刑事筆頭のギチョル(オム・ギジュン)は唯一の才能とも言える勘のよさを働かせ、漫画が殺人予告である可能性を視野に入れる。

当のジユンには動機もなければ殺した覚えも証拠もない。

しかし彼女の漫画が予言した死亡事件は編集一人の件にとどまらなかった……。

3.古代魔術っぽいですよね


一見ジユンが二重人格の霊能力者か悪霊に取り憑かれてるかに思えますが、殺人事件の実態は不特定多数の怨霊による直接の“復讐”です。

ただし、劇中にて言葉による説明は少ないですが、どうやら怨霊の復讐が現実となるために、ジユンの漫画が触媒のようなはたらきをしていた模様。

重要な手がかりの一つは、ジユンの殺人漫画がすべて盗作であり、謎のアドレスからメールで送られてくる下書き絵をそのまま原稿に清書していたという事実です。

そして送られてくる絵を描いたのは、ジユンがかつて漫画家を目指していた時分に出会い、一緒に暮らしていたとある女子高生(ムン・ガヨン)しか考えられないと、ジユンが打ち明けます。

火事で行方知れずとなったはずのその少女は、霊の声を聞いて霊が思うとおりの絵を描くことができる(というか描かせられる)という特別な才能を持っていたのでした。

しかし自分で充分に描けるその“怨霊の絵”を、なぜジユンに描かせる必要があったのか。

ギチョルとジユンがそれぞれ少女の行方を追ううちに、ジユンの過去についてなんだか香ばしいにおいが立ち込めはじめます。

4.男の首を折れる女性漫画家の腕力とは


こう二転三転するお話の中に、つっこみどころもなくはないんですけどね。

特に怨霊と漫画の関係が実はよくわからないまま終わっていて、漫画が触媒のような働きをしているというのは半分僕の脳内補完。

個人的には、“普通の人が死んで怨霊になったら生きてる人間より強くなる”っていうオカルト盲信な発想があんまり好きじゃないので、漫画という“生者のひと手間”が触媒という発想は好印象なのですが……。


ガヨンのラフでは触媒として弱いけれど、漫画として完成させれば現実になるだけのパワーを得られる?
それとも手に取りやすいWeb漫画を通してターゲットに読ませる必要が?

ていうかガヨンのラフの時点では台詞やコマ割りまで入ってる気がしないんだけど、ジユンは自分の漫画は全部トレースだって言ってます。んん?


細かいところを見ていくとこうしてボロが出てきはしますが、殺人漫画もとい怨霊イラストを中心にぐいぐい転がっていく展開は、観ていて細かいことがわりとどうでもよくなってくるようでした。

なにしろ本作にとって最も重要なのは“復讐”。
物語が進むにしたがって、誰がどうして殺されるのかに意識が集中していくのです。
なぜか?



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5.だって下衆しかいないんだもの!


怨霊の目的は必ず復讐。
つまり、殺される側は多かれ少なかれ、お恨み申すと言われるようなことをしでかした人たち。しかもだいたいみんな反省してない。
これは復讐されてもしょうがない。

ついでに(まだ)怨霊の恨みを買ってない人もことごとく癪に障るクソ野郎だったりします。ギチョルはその筆頭。

おかげさまで誰が死んでも悲しくないんですよ。
むしろ彼らが逃げ延びたり打ち勝ったりしてしまわないかどうかの方がハラハラします。

ここでその人たちの中に、誰かを守るためにしょうがなかったとか、怨霊の側が逆恨みじゃないかと言えるような作品だったら、ここまで面白くはなかったかもしれません。それはただ単に幽霊が怖くて殺人漫画のギミックが派手というだけで終わってしまいますから。

せめてそんな彼らの業の深さと対比したりそれを指摘したりしてくれる生まれついてのジャスティス野郎が、一人くらいいるのがこういう話の鉄板だろう、と思っていたら見事に甘えんなって言われました。

さすがは復讐に定評のある韓国映画

きれいごとはやはり一切抜きの“復讐”ジェットコースター。

心休まる隙なんて微塵も与えず最後の最後までたたき落としに来てくれます。

一番怖いのは怨霊よりも人間自身だという見飽きたオチだって、ここまでやり切ってくれれば申し分ありません。

(了)