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case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

映画録71『縞模様のパジャマの少年』

映画

ふう。と一息ついて、さて。と腰を上げてから、はて。と首をひねったまま沈黙する昨今。

物事の優先順位がわからんちんになって、静かなパニックに陥るのが慢性化しているようです。初めてのことではありませんけどね。こうなるともう、いくらやることがたくさんあっても、どれ一つとして手につきません。そのままその日が終わる。

 

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ちょっちょ一回、一回止まろ。これちょっとこのままいかんわ。止まる止まる。

 

 

※case.728の映画録は、5段落前後でまとめる既観賞者向けの参考記事を目指しています。ネタバレ・解説記事ではありませんが、物語の中核には触れているので未観賞の方はご注意ください。

 

7月29日 縞模様のパジャマの少年

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「君は大人になったら何になる?」

 

1.残酷が当たり前のジャンルでなおもショッキング?

 

「気がめいる陰うつな映画」30本 英誌が選出 : 映画ニュース - 映画.com

またこれですか。ええ、またです。月に2本程度発生するTSUTAYA DISCAS8プランの旧作無料券*2の使い道に困ったら、とりあえずここかもう一つばかり頼ってます。もう目指すしかないコンプリート!*3

しかし陰鬱映画といえば、どれだけ時間がたとうとも二次大戦関連ははずせないわけです。ナチスドイツ、ユダヤ人ときて、収容所が出てくる話は特にですね。逆にある意味当然のことすぎて意外性のなさゆえか、こういうランキングにあえて上がってくるようなことは少ないみたいですけど。しかしながら、本作のような衝撃作ともなるとさすがに食い込んでこざるを得ないはずです。タイトルやパッケージの画像からなんとなく想像がつく通りの概要となっている本作ではありますが、それでも最後まで観ないと後悔します。

いや、最後を観ると後悔するかも?もちろんいい意味で(?)。今どき二次大戦モノへ知らずに手を出すなんてことはないでしょうけど。

 

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2.あらすじ ~パジャマを着た元医者は、少年はきっと探検家になるだろう、と言った~

 

二次大戦中のドイツにて。8歳の少年ブルーノ(エイサ・バターフィールド)の父親は軍人だった。あるとき父は昇進し、ある地方の管理を任されることになった。一族総出でこの門出を祝ったのち、ブルーノの家族は母も姉も使用人まで含めて揃ってその地方の軍部施設に引っ越した。

学校はない。友達もいない。周りは厳しい顔をした軍人ばかり。退屈な少年の好奇心は、施設の窓から見える“農場”に注がれていた。そう遠くない場所にあって、自分と同じくらいの子供もいる。あそこからこの施設まで毎日野菜を運んでくる人もあった。

父はきっと、あそこのボスを任されたに違いない。ただ一つ不可解なことは、軍人以外の“農場”の人々が、大人も子供もみんな同じ青い縞模様のパジャマを着ていることだった。

母に疑問を打ち明けると、怖い顔をしてあそこに近づいてはいけないと言われた。しかし勝手口の裏の倉庫の窓から出れば、“農場”は目と鼻の先にある。ブルーノは意を決して母の目を盗み、林を抜けて“農場”を囲む有刺鉄線の柵のそばまで辿り着く。その柵越しにブルーノは、廃材の陰に隠れるようにして座り込んでいた少年(ジャック・スキャンロン)に出会った。

少年の名はシュムール。ブルーノと同じ8歳。

青い縞模様のパジャマを着ていた。

 

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3.いい映画だ。それしか言葉が出てこない。

 

クサイ見出しですがまさにそう。

オチはだいたい想像がつく。と思ったそこのあなた!そんなオチでランキングに上がってくるわけがないでしょう。と人間不信で魚座な僕は予防線を張らずにはいられませんが、掛け値なしにわりと「あ、そっちかー」というふうに思わされる意外な結末だったとは思います。WhatはわかってもHowが非常に問題な作品。それだけに印象深い作品となってもいます。しかも“期待”は裏切られていないという。

陰鬱映画ですからね。観終えた後の無力感も半端なかったですが、本当に怖いのは再視聴かもしれません。本作なら一度観た後だと、初見でも感慨深ったシーンがさらに180度違ったものに見えるでしょうし。僕ならおそらくシュムールと出会うあたりでいったんギブアップしそうになるかも。後半中程の「許してくれる?」でたぶん死にます。脱水症状で。

二人は出会わない方がよかったのだろうか。そんなことは考えたくないのだけれど。ああぁ、ちくしょう、ちくしょう。

 

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4.ただ戦争の中にあった

 

二次大戦映画で子供が出てこない方がおそらく珍しいですが、“子供同士”や“子供だけ”を描いた本作のようなものはさらに稀少*4だと思っています。多くの戦争ものは「戦争という事象の中では大人も子供も関係ない」という目線で、子供は「大人のもの」である戦争に巻き込まれる形で描かれますから、基本的に戦争や大人に対する引き立て役として子供は大人とセットにされることが多いのでしょう。でも戦争中だからといって、子供が子供だけの世界を構築することがなくなるわけではなかったはずです。まだまだ二次大戦には、創作的な価値においても今なお描かれるべき余地がたくさん眠っているんじゃないかと僕は思っています。本作ができたのもたった6年前。

またブルーノたちの8歳という年齢が絶妙ですよね。劇の冒頭には次のような一節が引用されます。

子供時代とは 分別という暗い世界を知る前に 音と匂いと自分の目で事物を確かめる時代である ――ジョン・ベチャマン

子供だけが正しい世界を知覚できる、間違った世界に疑問を持てる、というような主張へはどのように触れるつもりも僕にはありません。僕が思うことは、戦争という行為にどのような意義があろうと主張があろうと、子供がそれを大人と同じ目線で理解しないのは当たり前のことだ、ということです。

子供が嫌いな人はこの点が受け入れがたい人でしょうが(正直僕もそういう節はまだありますし)、しかし現に“そのように”なっているのですから、戦争という強大な現象の中においてこれはなるべくしてなった結末、起こるべくして起こった悲劇、それ以外の何ものでもないのではないかと僕は思うのです。だからこそ、やりきれないという思いがこみ上げる。これは『火垂るの墓』とも似ています。

 

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5.結末だけじゃない。ホロコーストと軍人の家族の気まずい空気

 

ところでブルーノ少年役を演じるエイサ・バターフィールドくんですが、びっみょ~にどっかで見た覚えがある気がします。『ものすごく近くて、ありえないほどうるさい*5』のトーマス・ホーンくんに似てる気がしなくもないですが、年が違うよなー、と思って調べたら『エンダーのゲーム』のアンドリュー・“エンダー”・ウィッギン御大将ではありませんか。ワァオ、成長してもかわいいまんましたね!(゚∀゜)

本作で「戦争なんか知らないよ」みたいな振る舞いを見せていた彼が、今年初めに戦争を“やらされる側”を体験して絶望して激昂していたなんて、因果なものです。製作陣が本作を観た上でのキャスティングだった可能性は充分にありますけど。

ちなみに軍人の親父殿(デヴィッド・シューリス)はルーピン先生ですよ。こっちはちょび髭がないせいか一見わかりません(笑)。また母親役のヴェラ・ファーミガさんも見覚えあると思ったら、『死霊館』のウォーレン夫人、それ以前に『エスター』の主人公でしたね。結構雰囲気が違うので役作りに驚かされます。

施設に来るまでホロコーストをよく知らず、夫とドイツ軍のしていることの実態を知って徐々に心を病んでいく彼女の有様は、本作のもう一つの見どころです。軍人の妻なのにそんな馬鹿なという意見は公開当初からあったらしいですが、ちゃんと実際のアウシュビッツ所長などの例に基づく根拠のある描写だそうです。むしろ軍人一家だからこそ、家庭に仕事を持ち込まないというのと同じようなことになりやすかったのでしょう。彼女がブランコでくるくるしてるのはふくらはぎがセクスィーながらも切ないくだりでしたが、アナベル人形に負けた後のロレインさんと考えるとこわかったです(^x^;)

 

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ちなみにそのヴェラ・ファーミガさんが出ないみたいなので本作とはもはや関係ありませんが、『死霊館』のスピンオフができるらしいですね。タイトルは『アナベル』。そう、アナベル人形の話です。ウォーレン夫妻がかかわる事件よりもさらに前の事件ということなのかしら。

トレーラーもつい先日公開された模様。今日の映画と違ってホラーなので、一応グロとかピックリとか注意です。


Annabelle - Official Main Trailer [HD] - YouTube

念力で引っ張るの好きだなジェームズ・ワン。彼は今回製作総指揮みたいですが。

*1:画像元:http://www9.plala.or.jp/Toguma/osuro2.html

*2:8プランは新作含めた全作品から月に8本レンタルできるシステムだが、8本見た後は旧作無料状態になる。別に最初の8本で旧作を借りられないわけではないけど、いつも月10本は観るんだから新作借りなきゃもったいないと思ってしまう。

*3:『ケス』とかレンタルされてませんが。でも買う価値はありそう。

*4:僕は二大マイバイブル『パンズラビリンス』と『火垂るの墓』しか他に知りません。

*5:素でミスりましたがあまりの鉄板ぶりが逆に面白かったのでそのまま。正しくは『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』ですね。