case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

2014,2,16 PM10 【映画録24『テストN』『エンド・オブ・ウォッチ』】


本日のお品書き


“映画中毒”だと認めます。

一本観た日と観ない日とで心身共に調子が違いすぎるのです。

もちろん呼吸をするように観賞ができる特殊体質ではないので、一本観れば一本分、体力も消耗しますし目も疲れます。
それでも、ここ数年間延々悩まされ続けている「体力はあるはずなのに疲労感があって何もやる気が起きない」という非常に鬱陶しい状態から、映画を観た後しばらくは脱却できているようなのです。

正直画期的ですよ。確かに映画は一本短くても90分、長ければ3時間も観賞に時間がかかるわけですが、ぼくは実際その何倍もの時間を無気力状態で無為に過ごしてしまっている自覚がありますからね。燃費が悪くても走らない車よりはよほど役に立とうというもの。

映画を観る⇒感想を考える、という流れが習慣化していますし、そのおかげで映画が脳のイグニッションキーになってるとかでしょうか。継続は力なりと言いますが、これもその類と言えるのか否か。

※case.728の映画録は、5段落でまとめる観賞済みの方向けの参考記事を目指しています(No.18から現在)。なのでネタバレにつきましてはあることもないこともご容赦ください。

2月9日『テストN』


  • 見えなかった地雷。予告編が意味不明でいい感じに不気味だったため気にはなっており、めずらしくレンタル開始と同時にピカピカの新作で視聴したのでした。結論から言ってしまえば、イマドキの商業作品としてはなかなかにオソマツな中身。人体に苦痛を与え続けるという禁じられたナチの人体実験が現代によみがえり、それでいったいどうなるんだ!?と、サイコサスペンス好きなら興味をそそられる内容だと思っていたのですが、待っていたのはごく普通以下/意味不明/しょっぱいだけのオカルトホラー。ただ、映画自体はパッと見どうしようもないですが、透けて見える監督像は、もしかしたら結構マッドなんじゃないかと感じてしまう、独特の薄気味悪さを覚える作品でもあります。
  • ネタバレも何も、何がどうなってるのか非常にわかりづらい or 一部本当にわからないっていうのが本当なようです。主人公は無名で行き詰まりかけの映画監督(だと、思います…)で、唯一の肉親といえば祖父だけという寂しい身の上。その祖父を尊厳死させたところ、遺品から日記が見つかり、それによって祖父が拷問や人体実験の主導をしていたナチの元親衛隊員だったと発覚。敗戦時にユダヤ人に成りすますことで逃げおおせており、主人公である孫にも自分がユダヤ人であるという嘘は突き通していた。その真実にやり場のない怒りと悲しみを覚える主人公。やがて主人公は祖父の日記を元にナチの実験を再現した映画を撮り始めるのですが、たった一人のアシくんが突然暴走し、映画そっちのけで日記通りの人体実験をマジで実行し始めるのです!うん。……うん?
  • スタート時の設定からして類推させる仕様ですので、言葉で説明されないのをただ説明不足と言ってしまうのは無粋です。たとえば主人公が映画を撮り始めた理由は、自分なりのやり方で祖父のしたことを世に暴いてやろうと思ったとか、それなりに想像がつきます。そういう“事情”はまあ適当でもいいですよ。問題は観ているとき、突然何かが起こって展開が進む、というのではなく、ほとんどすべての場合においていつの間にか話が進んでいるんです。理由とかがどうでもよくても、「◯◯をすることにしました」みたいな意思表示も何もないまま、主人公たちは黙々と何かをやり始めて、何をしているんだろうと思っていたらまた別の何かが始まって、ああそういうことだったのねと気付いたころにまた話が進む、もとい、進んでいることに気づかされる。「あの、すいません、何してるんです?」「はぁ?見りゃわかんだろ」みたいな態度でどんどん話が進むんです。説明不足というより無理やりわかりにくくしてかっこつけてるみたいな感すらあります。
  • いや、そういう趣向の作品というのは全然珍しくもないものです。わからないことが必ずしも悪いことでもない。ただ本作の場合は鼻につく。結構作り手の視点に立つと、この設定でこの流れならやりたかったことというのがわかるようになってきます。しかしどうやらそのやりたかったことと不釣り合いなところで、“語らない美意識”みたいなものを発揮しちゃってるように思えるのです。なぜ主人公ではなくアシ君が日記に取り憑かれたのかとか、日記の妖精が話しかけてるらしいみたいな声は何なのかとか、類推に任せるにしても類推の材料すら与えてくれないことにはふてぶてしさすら感じるレベル。これで本気で真面目にやってるんだとしたら逆にこの監督いささかキレてますね。
  • 不審な自己主張の激しさは演出の面にも見られます。映像の途中でコマを飛ばして人物の移動とかの描写を微妙に省略する技法は実際見るとよくあるものだと思いますが、あれをノイズっぽい不気味な効果音と共にやたら多用してくるのです。おかげで不気味な雰囲気や不安は煽られるのですが、実際そのシーンはホラーでも何でもなかったりします。つまりほぼ無意味、どころか再々不安だけ煽られて終わって何だったんだよ!ってなりますし、終盤ではもういいよ感が半端ないです。同じく「演出はよかった」タイプの最近観た『リセット』とちょっと比べたくなりますが、演出に物語と連動する要素がある分あちらが幾分優秀かわかったものではありません。またその演出と一緒にやたらBGMの主張も激しいんですよ。「オラどうだこの音楽は!不気味だろうが!」ってめっちゃ前のめりに主張してくるのですが、どう考えても主張するタイミングではなかったりして失笑さえしてしまいます。編集した人は単に雑なのか、大真面目におかしなセンスの持ち主なのか、映画の内容とは別に、透けて見える人物像がいささかぶっとんでいて、そこは感想に困るところです。

2月13日『エンド・オブ・ウォッチ


  • 「LAでは日常」なるコピペが流布するほどに治安最悪なアメリカがロサンゼルス州におかれまして、警官の方々はいかがお過ごしでしょうか。中でも不法移民やらギャングやらを抱えた第13区は日々戦々恐々。ポリスメンたちの最前線にて、とあるコンビの日常とドラマをモキュメンタリー形式でカメラが追います。なかなか出来もよくて面白いと聞き、ちょっとモキュメンタリーに心地よさも覚えてきたため積極的に視聴しましたが、ロスの怖さは十分伝わってきました。警官なんかやってたらマジで死ねます。
  • モキュメンタリーとは言いましたが、本作の姿勢はあまり厳密にまでその手法を踏襲しようというものではありません。空中カメラを介した普通の映像が再々入ってきますし、“撮影者”がはっきりしなかったり、そもそも撮影者がいないはずの映像も入ってきて、わりと普通のドキュメンタリー映画みたいな仕上がりです。ぼく自身がモキュメンタリーの手法を観慣れてきてしまったというのもあるのでしょうが、業界全体としてももうとっくに熱は冷めてきている頃でしょう。自画撮り的なモチベーションを映画の存在理由にすることをすでに一手法としてクールに捉え、必要な特性だけ切り取って既存の手法とも上手く絡めてハイブリッド化していく。というのは極めて既然な流れだと思いますし、それが上手くできない方々が一発屋となってしまっている感は非常に否めない現状があったりもします。
  • とはいえメインとなるのは主人公コンビが乗るパトカーの車載カメラと、二人が胸にこっそり付けているマイクロカメラ。ハンディカメラを持っているときもありますが、そのカメラの映像は少なめです。手法的な見どころとして面白いのはやはり車載カメラですね。もちろん普通に車に乗っているときの景色と同じといえば同じですが、「パトカーが観ている風景」と捉えるとそれだけでも多くの人には新鮮でしょうし、逆にわりと普通であるがゆえにロスの風景が素直に生ものっぽく受け取れます。その心地でサイレンを鳴らして違反車を追いかけたり正面から撃ちまくられたりする体験はきっと貴重なはず。いいところに目をつけたものです。
  • 前半はそんな感じで警官目線の「ロスの日常」と「ロスの警官の日常」を楽しめます。なにげに主人公二人のキャラがよく作り込まれているため、車内側のカメラを通して見られるふたりの会話だけでも面白いものがあります。そして中盤付近から独身の方の相方(ブライアン)が結婚したり、刑事志望であることを告白して野心に駆られたりして、徐々に物語が進み始めているのが見えてきます。警官と結婚するということがどういうことなのかみたいな普遍的な問題が絡んできたりもして、モキュメンタリーにしてはかなり感情移入も誘ってくる。既婚者である相棒(マイク)がしっかり支え役になってくれたりもして、なかなか堅実なドラマが展開されるのです。この二人の友情がまぶしい!手法ありきだった頃に比べ、モキュメンタリー映画は熱いドラマができるまでに進化してきているんじゃないかと思わせてくる点です。
  • 同じく中盤頃からなんだか雲行きも怪しくなってきて、刑事モノ(警官ですが)の宿命でしょうか、表彰とかされるくらい大活躍していたのが徐々にヤバい案件にも首を突っ込むようになってきて当然ヤバいやつらに目をつけられてしまいます。景気よく立てまくっていたフラグもロスの闇の前ではへし折ることなど許されず回収を余儀なくされ、大破産するがごときなかなか後味の悪いエンディング。普通のエンターテイメント作品であればその過程で巨悪に一矢報いたりもしてほしかったところですが、よりリアリティを求めるというモキュメンタリーの存在意義は、一技巧として組み込まれる段に至っても変わらず大きいものだったようです。

書いてる途中ではてな側でエラーが起こって今日観た『ホーリー・モーターズ』の感想がバックアップされずに消える悲劇。な、なにしてくれとんのじゃあ!!(;゜д゜)

すばらしい映画だっただけに感想も気合入ってたものです。さすがにげんなりしてしまったので今日はこの2本に抑えましょう。


“映画中毒”の難点をひとつ言えば、なるべく未観賞のもので、かつ、そこそこいい作品を観なくては“効きめ”が薄いこと。

投資としては惜しくないので、DISCUSをやめてHuluや近所のTSUTAYA店舗を利用すれば本数には困りません。が、あまり頻度を上げると今度は感想を書く習慣の方が擦り切れてしまいかねませんよね。難点ふたつ目です。

「何度見ても考えさせられる映画」ならそこそこ繰り返し効果を得られるとは思うので、これからはそういう作品を積極的に購入していくことにするかもしれません。出費に喘ぐことになりそうなのが三つ目の難点。しばらくは今手元にあるものだけでこと足りるでしょうが。