case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

2014,3,7 PM10 【映画録25『ホーリー・モーターズ』『オーガストウォーズ』】


本日のお品書き

書けてないながら観るペースは落ちてません。さすがにお尻が焚けてきて劇場から足が遠のいてる程度。

正直おうち観賞のペースも落とした方がいいかなと考えていましたが、そこへ来て流星のごとく落ちてきなすった“ボリウッド4”。

『ボリウッド4』公式サイト

噎せ返るほどのインド。このまるでインドゾウのような大波へどうして乗らずにいられようか。
乗ってやるよチキショー!∠('×')/

地元の古い劇場では「インド映画で◯◯劇場を盛り上げようの会」みたいなのが立ちあがっていたりいなかったりするそうです。
あっちでもインド、こっちでもインド。

もしかして、地球は今全部インドなんじゃ……。

※case.728の映画録は5段落でまとめる観賞済みの方向け参考記事を目指しています(No.18から現在)。なのでネタバレについてはあることもないこともご容赦ください。

2月16日『ホーリー・モーターズ


  • ふしぎな予告編に魅せられ、レンタル開始を待望していた作品の一つ。レオス・カラックスは寡聞にして知りませんでしたが(もうちょっとカルト映画も観たいですね)、どうやら非常に精緻な映像を撮りたがる人のようです。そして本作だけ通して受けた感じといえば、どうしようもない終末感を直視できてしまうという意味では、恐ろしい人。最近観たばかりの『コズモポリス』が思い浮かんだのはリムジンを中心に話が展開されるという表面的な要素だけが理由ではありませんが、本作の方がもっとしっとりしていて、本質的なところがあやふやなのに他人事でない分、切実な怖さがあります。まあそもそも“終末”の様相自体が異なるので比べるのは筋違いですが、一応思ったことなので書いておきましょう。
  • 主演ドニ・ラヴァン(こちらも恥ずかしながら初見)演じるオスカーは、リムジンで一日パリの街を廻りながら、依頼された“役”を指定された姿・場所で演技する、どうやら一種の“役者”のような職業。9つのアポ(依頼)を受けた彼のとある長い一日が本作。依頼をこなすときは、指定された時間に指定された場所にリムジンで乗り付け、メイクや衣装や小道具の用意はすべて車内で自分一人でこなす。撮影は必ずワンテイクこっきりでぶっとおし。というか、最初から最後まで撮影している様子がないどころか、スタッフらしき人物一人現れず、オスカーは演技の終了と同時にそのままリムジンへ乗って走り去ってしまいます。別に財産を持て余した富豪が酔狂に興じているわけではありません。「カメラは技術が進歩して今は目に見えないくらい小さくなった」とリムジンの中(つまり非演技)でしめっぽく語られはしますが、それでも普通の“役者”というにはあまりにおかしな職業。いったいそれが何なのかは最後まで語られず、どうやら想像するしかないようです。
  • 一つ一つの“役”のおかげで劇に抑揚はついていますが、リムジンの中や非演技のところだけを切り取っていくと核となる内容はとても静かで単調なものだとわかります。主人公オスカーの職業と人生について、ポツリポツリと類推の材料だけを与えられていくのです。そんな不確かな論証から不明瞭な過去に思いを馳せ、曖昧な現在と見比べ、しかしそこにある茫漠とした“終わりへの不安と焦がれ”へなぜか確かに共感させられてしまいます。
  • 「サルのように」といえば一般的に「気に入った行為を無心で繰り返す」という感じの意味合いで(概ね嘲笑的に)使われる慣用表現だと思います。これを思ったことと9番目のアポと関係があるかどうかまで定かではありませんが、劇中にてオスカーはかつての同僚と思われる男に「なぜ仕事を続けるのか」と問われ、「行為が美しいからだ」と答えます。自己実現において職業がゴールとなる意義とは確かに行為の目的化にほかなりません。しかし個人の幸福追求のカギは美意識です。自分が美しいと思う行為を“サルのように”繰り返すことが誰かの(本作で言えばオスカーやあの元妻らしき人などの)幸福追求である時、その終わりとは何なのか。
  • 「人は機械を必要としなくなった」ラストをしめやかに飾るあの例のホーリーモーターズな彼らの嘆きです。ここでいう「機械の喪失(機械の必要性の喪失)」は「手段の喪失(あるいは変革)」と言い換えることができます。すなわち“手段”は、当事者が直接欲する“目的”とは異なり、社会的(環境的)な意味で“誰か”から必要とされて初めて生まれ出ものと言えるのです。が、ここで“目的化された手段”というのがはたして誰に欲されるものなのかを考えると、それは当事者によって必要とされながら、それ自体は環境的に“誰か”から欲されることでしか肯定され、多くの“誰か”から欲されない「手段の喪失」の過程に至ると否定されることになると分かると思います。個人の幸福追求のための“目的”でありながら、社会的に必要とされなくなることで“終わる”のです。その切々とした不安を、“役者”というモチーフ(の変態ですが)を映画において使うことで多層的に表現したのが本作なのだとすれば、何度ブラボーと繰り返しても足らないでしょう。傑作と言うには悪い意味でなくもはばかられますが、間違いなく必見の怪作です。

2月19日『オーガストウォーズ』


  • 「SF戦闘スペクタクル」ではありません(前置き)。国内の宣伝の嘘つきっぷりがズバ抜けて酷いにもかかわらず出来はかなりいいと聞いて変な興味をそそられなかったわけではありませんが、個人的に戦争映画をしばらく見てないなあというのと、グルジア紛争が舞台というのも珍しいと思って視聴。ロシア映画のCGの質感もやや独特であると聞いてワクワクしておりました(やたら事前情報集めちゃったのは宣伝が大嘘だって噂のせいだった気もしますが…)。結果として良作あるいは秀作にしてさらにひと癖ある、なんというか確実にアタリです。もちろんSFではなく、現実の歴史を題材とした戦争映画として。
  • 主人公は絶賛婚活中のシングルマザー。大自然いっぱいの南オセチアに出張中の元旦那(軍人)とすぐそこのじいちゃんばあちゃん(旦那の父母)の家に息子を預けたら、情勢の読みが甘かったせいでちょうどグルジアが攻め込んできます。たった一人で前線に取り残された息子を救うため、銃を撃ったもことないザ・一般人のママが戦場を駆け抜けるお話。なぜ息子一人が取り残されてなぜパパが助けに行かないのかは個人的に好きなところなのでここでは伏せます。とにかくママが息子のために銃弾飛び交う中を煤まみれで半泣きになりながらめちゃくちゃ頑張る姿がグッとくる作品です。いや半泣きはたぶん僕の脳内補正ですが。
  • 主人公は一般人なママですが、主役はツートップで彼女とロシア軍です。昨今のミリオタブームが意識されたかどうかまではわかりませんが、実際この点の魅力は大きかったですね。厳戒態勢の戦場へ外の一般市民たるママがどうやって潜り込んだのかといえば戦地記者に紛れ込んだわけですが、たまたまちょっと縁のあった兵士と再会して彼の小隊に同行させてもらって敵スナイパーの潜む市街地とかかなり最悪の危険地帯を進行。そして当然のように戦闘が始まる。というミリタリー趣味的な目線で見ても熱い流れに持っていったりしつつ、主人公と戦場とを分けずに描いています。それは無理な両立をしないというどころか、自然に同居・融合させることに成功しているとまで言っていいくらいで、脚本的にもかなりグッドでしょう。もちろん戦闘描写はロシア軍全面協力なので折り紙つきです。
  • で、日本の配給会社が臆面もない乗っかり根性でいいように利用したあの巨大ロボットが何だったのかといえば、あれも実際の方が発想として面白いんですよ。子供が物を見てとき自分の想像を現実に重ねて見ることはよくあると思うのですが、主人公の息子がそうして見ている情景、つまり空想をそのまま彼の視点のときに描写しているのです。しかも戦争映画でという取り合わせが個人的にツボでした。戦場や戦争という、子供にとっては逆に想像を絶してしまう現実を補完するために、大好きなおもちゃのロボットを用いた空想に置き換える。絶望だけでなく希望もそれに置き換えて自分を守る。言われてみれば理解できないことではないのに、子供のそういう姿をそのまま戦争映画で描写したというのは他に観たことがありません。目の付け所としても、表現として成功している点でも類を観ない面白さです。
  • ところで前半のママは目のやり場に困ります。当初彼氏とバカンスに行くつもりでそのまま来たのですからしょうがないといえばしょうがないのですがね。とはいえ戦地で会った兵士がそれを見て鼻の下を伸ばしたりバカにしたりといったささやかな描写が、これをただの目の保養的なサービスだけでなく、俗っぽい人物という意味での一般人が戦地でどのように浮いているのかの描写にも繋がっていて、拝金的な嫌悪感を抑えてくれます。さらに中盤で彼女がズボンを履くことによって全体の空気も引き締まり、なんとなくママ自身の成長の様子を見たような気分にもなりますからね。そういう些細なことでもクライマックスへ向けたダッシュのための有用な高低差となっているわけです。ちゃんと計算の上でやってるとしたらずるいですね(笑)
  • ちなみに六行目ですが、髪がない人にあるので笑ってしまった話をここに書いても大丈夫でしょうか。命とかが。

ブログのデザイン変えてから初めての映画録です。
こういう余白の利用の仕方とか、また引用枠復活させた方がいいか悪いかとか、書き方考えていかないとですね。ある程度はテンプレがあった方がはかどるそうなので。


※溜めすぎ徳政令の危機なので今日までに観たやつ並べときます。感想書いたら消してく形式で。