case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

2014,3,8 PM12 【映画録26『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』】

下の弟も映画を観ることが判明。しかも今のところドラマコーナー通いだとか。ちょうど帰省してきて今夜は『ジンジャーの朝』の話で盛り上がっておりました。

嗜好のレベルでは違いはあれど、兄弟で趣味ってある程度似てくるんでしょうか。人間としてのタイプも結構違うんですけどねえ。我がことながら面白いです。

※case.728の映画録は、5段落でまとめる観賞済みの方向け参考記事を目指しています(No.18から現在)。なのでネタバレについてはあることもないこともご容赦ください。

2月20日『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命


  • 叙事詩的な映画というもの自体、厳密にそう言えるものは珍しいのではないかと思いつつ興味がありました。そもそも叙事的ということ自体漠然としかわかってなかったんですけど、本作を観て、錯綜しながらも進んでいく人の人生そのものを純粋に捉えてフィルムに収めていけばそうなるのかなと思いました。とはいえ果たしてどんな人生でもいいというわけではないでしょう。最近写真もそうだと分かってきましたが、大事なのはコントラスト。本作は延べ5人、少なくとも3人の異なる人生を、15年という時の中で順に描き、繋げていくことで、全体に確かな切なさのかたちを彫り起こすことに成功しています。こういうのは大河的とも言うのでしょうか。
  • 「稲妻のように走り、雷のように死にたいか?」誰もが印象強く覚えてしまうであろう言葉のかっこよさもさることながら、本作に対する象徴性としてもたいしたセリフです。逆に言えば、それだけ本作にはこの問いが一貫して居座っている、貫かれている、ということでもあります。これが守られている作品が悪い作品なわけがない。3人の主人公たちはこの問いに答えを出すことなく、また問われていることも知らぬまま、まるで宿命のように駆け抜けていきます。代えられない運命のような切なさと、しかし宿命と言い換えられる力強さと、雷の輝きのような刹那をいとわない美しさとまたも切なさ。邦題のセンスはやや微妙だと思っていましたが如実に的を射てはいたわけです。それにしても原題のあまりの完成度に、単に『宿命』とはできなかった気持ちもわからなくはありません。
  • まだ3段落目なのに書くことがなくなってしまいました。それだけ本作はむしろ筆舌に尽くしがたいものに包まれており、叙事的の実質とは具体的な事柄を並べることにあるにもかかわらず、異様なまでに精神的な要素をはらんでいるのです。しかも通して読まなくては意味のない巻物のような様相。すなわち劇全体を包括的に捉えて初めて、本作の一貫したものに触れられる。「稲妻のように走り、雷のように死にたいか?」やはりこれを忘れないことです。逆にいえば本作は、3人分の人生を描きながらこの一つの問い、あるいは一つの哲学に集約させることに成功しているのです。バラバラの人生でそれぞれの答えを描く群像劇もアリだと僕は思いますが、この作品が見せてくれる“一貫性”の強さは凄まじい。
  • 先に(一段落目で)延べ5人の人生とも書きましたが、主軸として縦に繋げられている3人の人生の外側にはもちろん他の人々がいるわけです。注目すべきなのはその数人の脇役たちが入れ替わっていく主人公たち3人の人生(当然異なる時)にそれぞれ違う形で関わる点。彼らは「稲妻のように走」らず、「雷のように死」ななかった者たちでもあります。しかしすべての宿命の火種、「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ」のキーは、その彼ら一人一人でもあるのです。過去と現在とを繋ぐ、外側の人々。それは少々無粋ながら、単に輝きとの対比と言い換えた方がわかりやすいとは思います。
  • ところで包括的に見て初めて意義がわかるということは、3人目であるジェイソン(デイン・デハーン。『クロニクル』の彼ですが本作でも素晴らしい!)の話からが本番ということになるわけですが、その前にある2人の物語もまた、それぞれに趣が異なるだけでなく、負けず劣らず激しく印象的です。しかしこの点がまた映画脚本的に恐ろしいのは、おかげで終盤まで飽きないという点ではなく、異様にひと繋ぎの様相を呈するがゆえに完全に切り離して別々のものとは考えられず、見比べようもないという点です。はっきり言って雰囲気的な荒々しさは、1人目が困窮する銀行強盗、2人目が汚職に飲まれかける警察官、3人目が思春期の鬱屈した少年(たち)と、後ろへ行くにしたがっておだやかになっていきます。ですがそれはまるで、下り坂を転がり出したボールが平面へ到達しさらに上り坂を目指すにしたがって速度を落としていくような滑らかな雰囲気の転換であり、またさしかかる上り坂はボールの勢いを包むように受け止めるかのような優しい感触でできている。もはや職人芸とも言える脚本起伏の曲線美が、実に心地の良いまとまりを本作にもたらしているのです。

上の弟も帰ってきてて、暇だからとまた映画ばかり観るつもりのようです。心を強く持たないと一緒に観てしまう…!('×';)