case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

2014,3,16 PM8 【映画録30『メリダとおそろしの森』『タイガー 伝説のスパイ』】


本日のお品書き

ツイッターは垢だけ取っといて正解でしたね。伊予灘震源でわりかし揺れたと聞くと知人の安否も気にかかりだすというもの。

こっちも震度4くらい来たって観測では言ってましたが、体感3?立たせてあるドールも誰ひとり動いてはおりませんでしたし。

ちなみにちょうど起きていた私は揺れの様子をうかがいながら机の下にもぐるべきかドールたちを死守するべきかで進退窮まっていました。という美談。

※case.728の映画録は、5段落でまとめる観賞済みの方向け参考記事を目指しています(No.18から現在)。なのでネタバレについてはあることもないこともご容赦ください。

3月6日『メリダとおそろしの森


  • よくよく考えるとピクサーで普通に人類がメインキャラって意外に珍しいんですよね。それによる人間=モブという意識もあってか、なんとなくキャラクターデザインなどで敬遠していた感もあった作品。ただ比較的大人向けでやや暗めの内容だと聞いてからは気になっておりました。ふたを開けると大人向けというより“おとなしめ”という感じでしたが。純粋な興奮材料である派手さやめまぐるしさには欠けるものの、その分落ち着いてじっくりと味わうことができる。大筋も目新しくはないテンプレート路線ながら、よく見るとちょっとした変化球で、隠し味のようにエスプリが効いている。確かにあまり子供向けのエンタメを意識していないようだという意味では大人向けだったかもしれません。
  • 課題が二転三転する脚本構成もちょっとした特色。「子供の幸せを願う母親と自由に生きたい年頃の娘のすれ違い」という中核を担う題材は貫徹されていますが、ある問題を巡って母と子が対峙する、あるいは向かい合い、手を取り合うといった所作について、間に介される具体的な“ある問題”が中盤あたりで大きく変化します。物語の目的がわかりにくくなるので、普通年少層を意識する場合は取り入れずに、こういった目に見える目的まで初志貫徹させることが多いのです。しかし、比較的大人的な目で見れば、最初から最後まで同じ目的に向かう物語というのは途中で飽きがくる可能性があります。もちろん、途中で目的を変えるだけが飽きさせず疲れさせないための手段というわけではありませんが、本作の場合は積極的にその手段として採用されたようです。確かに意外性のある展開で面白い。
  • 意外性といえば、本作の主人公・メリダはとある小国のお姫様です。「お姫様」といえばディズニーの得意分野(というかメリダは正式のディズニープリンセス。現在公開中のアナとエルサを除けば一番新しい11人目)。しかし本作の場合はアンチ・ディズニープリンセスと言い出さんばかりに、これまでのディズニー的“プリンセス”の王道に背いているところがあります。それはいわゆる“王子役”がいないという点です。本作で母と娘の仲たがいの直接の原因となるのは、国を盤石にするための政略結婚のする・しない。結論は数多の創作の歴史の大多数が示す通り、真実の愛とは自分で勝ち取ってこそ云々、お母さんが間違っていたわ、自分の思う人と幸せになりなさい。この結論をわかりやすく示すために、ディズニーを初め多くの作品がこの“自分(姫や少女)の思う人”を具体的に提示してきました。それが“王子役”です。しかし本作ではそれをあえて排し、母と娘が完全に一対一で互いの思いを戦わせる構図となっているのです。
  • このため、普通のプリンセス系と同じ結論に向かいながら、成之に依存しない分、微妙に精神論じみた“母と子の変化”が多くなっています。なのでどうしても終盤の説得力が弱くなり、それを気にしてか別に用意した成り行きが多少無理やりに見えてしまう傾向にあるのですが、“王子役”がいる場合に発生し得る「まあ恋人がいるんならしょうがないわね。二人の愛は誰にも引き裂けないんだもの」という、母親からすれば諦観じみた着地点には至っていないわけです。自分が正しかろうが間違っていようが引かざるを得なかっただけという状況に物語が進んでしまうと、母親側の心の問題が本質的には解決されないことになってしまいかねません。特に本作は、ある意味母・エリノアと娘・メリダダブルヒロインと言っていいくらい両者の心の有様が重要視されていますので、王子役は必要なかったどころか邪魔になっていた可能性が高いのです。
  • 一応付け足せば、王子役がいないことでディズニー的なヒロインの幸せ⇒愛する人と幸せになること、という固定観念からの脱却も示すことができています。「そもそもゴールが結婚じゃなくてもいいじゃない」という結論に達してもいるわけで、女性の自立という現代的なテーマに上手く沿わせることもできています。メリダの人格も、お転婆なかわいらしさの裏返しとして自分本位で自尊心が異常に強いという現代的な幼さを体現しています。行動力のある女性が多いのはディズニープリンセスの昔からの特徴ですが、愛や思いやりといった母性に溢れた側面を持つ彼女たちに比べるとメリダはかなり子供っぽいですね。その点も、いわゆる大人的な考え方に凝り固まったエリノアと上手い対比になっていて、「真実の愛を知っている」などといったことでどちらが偉いといえる構図にはなっていないのも面白いところです。

3月9日『タイガー 伝説のスパイ』


  • 【映画録25】でちょっぴり触れてから気にかかっていた「ボリウッド4」の一作。乗る乗る詐欺はせずに乗ってみました。一発目はとりあえずアクション要素が多そうなスパイものから。いやー、やっぱり楽しいですねインド映画は。期待以上のアクションと、わりとどうでもいい脚本!頭を使わずに観ても楽しめるくせにいちいちつっこみながら観ても面白すぎるので困ります。あの“許せてしまう”独特の空気はいったい何なんでしょうか。
  • タイガーはインドの諜報機関のベテランエージェント。タイガーは腕利きで滅法強いので敵性機関にも恐れられている。タイガーは裏切り者に容赦しない。タイガーは仕事中毒。タイガーは独身。タイガーは任務に行く。タイガーはある女性を利用する。タイガーはその女性に恋をする。タイガー初めての恋。タイガー初めての戸惑い。タイガー、わけありのその子に夢中で四苦八苦。タイガー、しかしその子は実は敵スパイ。タイガー殺さず。タイガー愛の告白。タイガーふたりで逃亡。タイガー初めての裏切り。タイガー愛を貫く。タイガー、タイガーどこへゆく……。
  • このタイガー役のサルマーン・カーンがまたいい味を出してるんです。いかにもヒーローかスパイって感じのコワモテイケメンなのですが、女性相手にどぎまぎしてあたふたするところのギャップなんかもいい感じですし、いい感じに中年手前なので表情の豊かさが際立っています。細身のわりに手足が太いのでアクションにも重みがあって見応え抜群。そして何より歌がうめぇ!めっちゃうめぇ!ダンスのキレは中の上ですが、アナタそんだけ動けて顔もいいのに歌うますぎって。インドの人気俳優の条件から考えると普通に上手いくらいなら驚かない人もいるかもしれませんが、サルマーンの歌声には初見の誰もがきっと吹き出します。声色が顔から予想つかなかったというのもあったかもしれませんが。


  • あとインド映画といえばやっぱりアジアンビューティ。主演のカトリーナ・カイフさん。ぴちぴちの新人らしいですがまあ、やばいっすね。黒髪の女神。見つめられて目が合ったら失禁しそうなレベル。

  • この美しさ!目つきの艶っぽさ、腰つきのセクシー度合い。すべてがPERFECT。そりゃ唐変木の凄腕諜報員も恋に落ちますってば。それにしてもスクショ取ってて気づきましたが、画面の焦点が彼女に当たっているとき一枚絵的に見えて実はフレームごとに部分部分が隠れるような映像になっているんですね。一時停止すると必ずと言っていいほどベストショットからマイナス1したような静止画ばかりが手に入ります。つまり我々は映像を頭の中で組み合わせてヒロインという一枚絵を想像しているわけですが、直接具体的に一発のベストショットを与えられるよりもこの過程を経た方が絵が脳に浸透するはずです。つまり味わい深くなるのです。中身が大味でも映像に手抜きはなし。インドすごい。
  • 踊りもアクションもたっぷりですが、尺は普通に2時間とインド映画としては短め。3〜4時間が普通という先入観で敬遠している人にも気軽にお勧めすることができます。『ロボット』ほどぶっ飛んだ派手さはないものの、見応えは充分。ボリウッド4の一発目としても悪くないチョイスでした。