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映画とお人形ばかりで恐縮です

2014,3,29 PM5 【劇場映画録『アナと雪の女王』吹替版】

不覚にも一週以上空けてしまいましたが……。

先週、金・土と両方都合がつくのでどちらにしようかな、よし、土曜にしよう。
と決めたはずが寝ぼけまなこだったもんで金曜日に予約取っちゃって、まあ自分は休みだからいいや、と胸を撫で下ろしていたのですが、一体何を安堵していたんでしょうか。
普通に春分の日でしたよ。
休みは自分だけじゃありませんでしたって。
どころか、世間の学徒サン方はこの木曜日に卒業式だったっていうじゃあありませんか。
そりゃあディズニーの新作が大入り満員でないわけがない!吹き替え版でしたしね。

まあしかし、いつも空いてる時間を狙って行くこともあってか、満席の劇場でど真ん中に陣取るという指定席制度ならではの犯行現象もそれはそれでオツでしたね。周りお子様ばっかりなせいでめっちゃ大人げなく思えるんですよね。ドキドキする背徳感!
ごめんね、よい子のみんな。このネット予約席一人用なんだ(ニッコリ


以下、感想本文。具体的なネタバレは避けていますが、物語の核心には触れています。








《実はメリダは先駆!?“王子役”がいても規定路線からの脱却を目指す、ディズニーの新しい魔法!二人の少女のミュージカル!》

そもそもこの一月くらいのエントリ(『エンダーのゲーム』の記事)でも持ち上げてから(知ったのも同時期)ずっと心待ちにしていた本作。ダブルヒロインや女王エルサの「望まない大きな力」など、個人的にワクワクする要素も気にかけつつ、何よりあの『美女と野獣』のスタッフが現代のディズニーに何を持ってくるかの部分に、半分期待、半分怖いもの見たさみたいな気持ちで観に行ったんですよ。考えてみれば「望まない大きな力」とかあの野獣に通じるところがありますし、男勝りなベル様と比べると客のもてなし方一つにもうじうじ悩む野獣の方がめちゃんこかわいかったりで、あの時点からすでにダブルヒロインなんて成立してたようなもんなんです(断言)。
しかしテーマは真実の愛。
“見た目で人を判断するべきじゃない”といった人相や人種の差別意識が取り立てて問題視されていたあの時代もまた『美女と野獣』にマッチしていました。しかし愛云々について語ると、多様な価値観が共存するためにか、現代はより哲学的で根源的、そして条理的な時代であると僕は考えています。「恋=愛」「恋 is only 愛.」みたいな安直で制約的な方程式は古臭い。あれも愛、これも愛というのが条理で、ある意味節操がないとも言える現代。一つの価値観がただの一例になりさがるほど多彩な価値観が居並ぶ時代へ、夢の国の古参がどんな一例を打ち出してくるのだろうか。なんだか“王子役”もいるっぽいし。
古臭い武器を使って子供だましを描いても市場には許されるでしょうが、それを乾いた厳しい目で見れば、ディズニーは所詮子供の観るものだったと言わざるを得なくなるわけです。それはそれでもよいのですが、大人の視聴にも耐える素晴らしい作品を作ってくれる現代の集団というものにやはり期待したくなってしまうもの。
赤いズボンのネズミを持ち出してくるよりも、「美女と野獣」を持ち出してくるということの方が“そういうこと”だったりもします。
はたして、ディズニーの中核は夢を作る興業大国から、地位に胡坐をかくだけの工業大国に堕ちてしまっているのか。

答えは、いや、否でした。否でしたねえ。
全然、ディズニー。現代でも、ディズニー。この歳になっても、ディズニー。
観れます、ディズニー、いくつになっても!
この夢の国になら、きっと生涯ついていかざるをえない。

いや、まあまずは、普通によくできたピクサーの“ピクサーレベル”のCGアニメなのです。至ってピクサー。よしんばたとえ手抜きでも他の追随を許さないであろう、最高級のアニメーション。「普通」が最高級。個人的にスカートのひるがえり方に異様なこだわりを観た気がするんですが何だったのでしょうか(笑)

またこの映像技術と序盤からたっぷりのミュージカルとが最高の相性なのです。
動かせるのだから踊らせなければ嘘であるとばかりに歌う、歌う。

余談じみてしまいますが、吹き替えに合わせた日本語版歌詞も松たか子さん&神田沙也加さんの歌声も素晴らしかったです。
イディナ・メンゼルが『Let It Go』を歌うPVを観たのが本作に惹き込まれるきっかけでもあったため、字幕版か吹き替え版か最後まで迷っていたのですが、吹き替えでまったく問題なかったですね。
英語歌詞ほど常に迫力を持てる歌声ではありませんでしたが、母音のはっきりした日本語の発音が要所要所に高い波を作り、歌声が後ろに向かって大きく伸びていくのです。
第一印象から強烈でかっこいい英語版か、徐行から右肩上がりの日本語版か。どっちを選んでも鳥肌ものです。

そして脚本。クライマックスを特筆せず総合的に見れば、他のピクサー作品と一線を画するほどではなく、良くも悪くもおとぎの国のファンタジー、その安定路線。トイ・ストーリーシリーズなどと比べると、濃度で劣る感じです。
なんだかんだでディズニーはわりと昔から1作品2主人公(バディ的な関係の2人)は得意技で、それに対して今回のダブルヒロインというのは2人の関係に少々距離があるせいか、それぞれの描写がそれぞれではっきり分かれてしまっていて、相乗的に演出されるような濃密さが小さめなんです。

先に例として出してしまったのでそのまま使いますが、例えばトイ・ストーリー初代のウッディとバズ。この二人は自分の地位を巡る競争という一つの課題を共有し、一本のストーリーをなぞることで両者が同時に描写されるという、脚本的に見て良質と言える構図を持っていました。映画という短い尺の中で2人以上の主要人物を描写するのに、これはとても重要なことだったりします。
対して、本作のアナとエルサは、「エルサの隠し事」「アナの過去」「真実の愛」といった共通課題を持ってはいます。しかしそれらは具体的には「国の危機を救う」という課題に統合されるのですが、当然これへ取りかかる物語というのはかなり大きな枠、スケールを持つことになってしまいます。アナとエルサだけの物語ではなくなってしまうのです。

もちろん、これは物語上の落ち度ではありません。設定から成る構図からなるべくしてなったもの。また、ウッディとバズのように「男同士のぶつかり合い(から和解まで)」とはまるで目指すところが違うのですから、本作は本作でよくまとまっています。
ただ、主要キャラの描写の密度という点で見たとき、「ダブルヒロイン」という名の二兎追いのせいか、全体にやや駆け足気味で、強く感情移入したいならちょっと物足りないかな、という感じはしてしまいました。

安定路線の脚本に光るものがないなんてことはないんですけどね。
あと、最初の王子が心身ともに「いい人」だったのは意外性があって面白かったです。悪く言えば分かりにくいのですが、「わっかりやす!」って思われるようなベッタベタなキャラでない方が自分としては好印象。
ひとつ気になるのは、王子がアレだったせいでちょっとテーマが説教臭くなりすぎちゃったんじゃないかということですね。アナがいっぺん痛い目を見て溜飲の下がる人も多いでしょうが、物語上の手続きとして必ずしも必要だったかどうか……とはいえ、アレなしにアナを移り気な少女として見えないように描くのは至難ですし、二股問題で変な賛否が起こりそうですから、さすがにこの問題は対象年齢的にもスルーでしょうか。

そしてなんだかんだでクライマックス。というかこの物語の結論です。
そこに新しい価値観を打ち出そうとして苦しくもがいてる感はまだまだあるのですが、それでも感動しましたよ。

「愛とは何か」「真実の愛とは?」
答えに恋愛的な「愛」を持ってこないのならいったいどんな高尚で大それた価値観を打ち出さないといけないのか。というよく陥りがちな哲学次元へ迷い込むこともなく、驚くほどごく単純な回答に落とし込んだその思い切りの良さと謙虚な姿勢には、感服の至りでした。

それは極々簡潔で、今まで誰しもが取り扱ってきた「無償の愛」。
思いやりとか、真心とか、自己犠牲とか、とかく誰かを大切にするという心の行いすべてをひっくるめた、単純にして曖昧な、始まりにしてこれに尽きる「愛」の話。

こんなテーマ自体はありふれたものです。同様のものは、ディズニーの中だけで見ても、数多くの作品が取り扱ってきたはずですね。
ただ、それなら何が驚くべきことかといえば、よりにもよって“ディズニープリンセス”というレーベルの中でこのテーマが打ち出されたということなのです。
もとい、このレーベルにおける共通認識としてあるべき「恋愛的な愛」を差し置いて、このテーマと結論であることが驚きなのです。

ディズニープリンセスで実際にこのテーマに先に手を出したのは『メリダとおそろしの森』です(特に意図があったわけでもないのに【映画録30】。すごい最近の記憶でビビった)。ただし、あちらはそもそも“王子役”が不在。対して本作は、明確に“王子役”がいながら。「恋愛的な愛」が差し置かれたことはそのためにより際立ってもいます。

ただ差し置かれたと言うと語弊があるかもしれません。より厳密には、「恋愛的な愛」も「真実の愛」の延長線上にあるものの一つであると、本作ではしっかり表現されています。Dプリンセスのレーベル内でそうすることによって、やんわりと、「愛とは男女間のものがすべてではない」という主張にまでつながっているのです。

この関連で面白いのは、アナが最初の王子と電撃結婚しようとしてエルサに否定される流れで、「愛がどういうものかも知らないくせに」という苦言の出てくるあたりですね。
恋に恋する若い男女に対してなかなかに辛辣なお言葉。しかしながら「愛って素晴らしい!」と手放しに誇張される現代の世相を思うと、やはりこれをディズニープリンセスで言ってしまうということ自体にエスプリが効いちゃってます。
さすがに海の向こうの産婦人科医療の統計データを調べて裏を取るほど悪趣味ではありませんが、うちの県はワーストなので意識してしまいますね。
ともあれ、「愛って何だろう」という問いがちゃんと観ている側にまで響くような作りにもなっているのです。

ちなみに「エルサだって知らないくせに!」と言われて言い返せなかったエルサですが、彼女には最初から胸の内に答えはあったと思うのですがどうなんでしょう。あれだけ父母の献身を受けて漠然とながら抱くものはあって、ただ心を閉ざしていたせいで答えとして認めていなかっただけ、というのがエルサの本当のところだったんじゃないかと思います。最後に自分で気づいたのが何よりの証拠でしょう。実質的な意味で「知らなかった」なのはアナだけ。

あと、半分余談でもありますが、なんやかんやでクリストフの立ち位置が絶妙ですよ。
物語のテーマと結論を受けて、ともすれば“王子役”意味なかったじゃんと思われそうな立ち位置ですが、しかしアナが彼への(彼からの)愛から逆算的に「真実の愛」へと至る、すなわちきっかけとして重要な役割は果たしています。
それに、精神的に幼いアナを戒め続ける役を本当に担うべきはエルサだったのでしょうが、彼女がそれを果たせない部分を彼がしっかり埋めてもいるのです。あくまで脇役なので、終始アナとエルサの物語を成り立たせるための装置という嫌いは否めませんが、最重要のピースであったことは間違いないでしょう。好意的に観れば、非常に謙虚な“王子役”だったと思います。

細かい見所は本当にたくさんありますね。
ピエール瀧さんが声のオラフは目で追ってるだけで愉しいキャラクター。ピクサーお得意のバラバラ芸人キャラですね。ガヤを務めるのが優秀な作品はやはりいい。
というか、終始言動がエキセントリックであるがゆえに秀逸にカモフラージュされていますが、雪だるまでありながら冬を終わらせることに協力を惜しまないオラフこそ、本作が訴える「愛」の化身だったと言っても過言ではなかったりします。
本当においしいところをそれとなく実は脇が押さえているというのも良作的性質。象徴的存在のまたこの謙虚ぶり。


夏、満喫。


ピクニックも。

また水や氷の表現とCGはたいへん相性が良いものですね。氷の魔法を観る度しきりにすばらしいと感嘆してしまって、能力でお悩みのエルサ様には大変申し訳ございませんが、はよ暴発せんかなー、と終始ワクワクしておりました。
氷の城建造もさることながら、石壁の表面に氷が這い伸びていく描写とかにとても興奮します。
クライマックスで吹雪そのものが凍りついたシーンは静的ながらの圧巻。お腹いっぱい雪観てるはずなのにすこォしも寒くないワァ〜(ヴィブラート

好きなシーン。クリップ映像にもなってる「チョコレートだ!」

ここのお二人がすごいかわいい。


アナ様のいとうるわしい寝起き姿。
女性監督ならでは、みたいなクローズアップの仕方はあんまり好きではありませんが(世の男性の想像力の乏しさを嘆いてみてもいいのですけど)、他にもアナ様肩までソバカスすごかったりと、手放しにヒロインと祀り上げられる多くのヒロインよりもずっと強い現実感。内面もかなり子どもっぽい。
もちろんこの内面がテーマに繋がってくるあたりよくできています。メリダに通じるところも多いですが、あっちはよりテーマとの兼ね合いがわかりやすくて偶像的だとか(長くなるので割愛)。


5歳のアナ様prpr
「雪だるまつくろう」のクリップは2回聞くとこの五歳のパートの方でうるっとくる。そして映画を観てからもう一度見るとじんわり泣けます。


と、だらだら書きづづっているとキリがありません。今日はこのへんで。

いやはや、何度も観ないとネタを追い切れないモーパイとはまた違う意味で、久々に「今すぐもう一回観たい映画」でした。期間中に暇が合えば今度は字幕版で観たいところですが、ちょっと難しいかな。
正直年明けからこれ一本本命で待ってたせいもあってか、朕はもう満足したぞよ、って感覚がすごいですね。なかなか映画録更新できないのもそのせいだったりなかったり。

などと悠長に言ってる場合ではなく、本当にまたおうち観賞の方が溜まってきてしまっています。またもや徳政令の危機。
毎月の恒例にならないか心配しつつ、またここからリストアップしておいて、更新するごとに消していきましょう(笑)

観賞済みリスト(感想既筆は取消線)

  • 3月20日『ロード・オブ・セイラム』
  • 3月21日『マニアック』
  • 3月24日『一命』(再)
  • 3月25日『嘆きのピエタ
  • 3月29日『春、バーニーズで』
  • 3月29日『ユージュアル・サスペクツ