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case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

4月7日【映画録34『春、バーニーズで』『ユージュアル・サスペクツ』】

本日のお品書き

一時期情報が出回っていた、「キウイは皮ごと食べるのが正解」。

後輩たちと道連れにして試した時は、わりとどっちでもいい、剥いたのを食べるのが習慣づいているから剥いて食べたい、ものを食べるのにつべこべ考えるは面倒だ、とまあ男子学生らしく色気のない結論に至ったわけですが、個人的に一番面倒だったのは、皮付きのまま輪切りにしようとすると皮が固いせい(あと包丁の切れ味が悪い)で実が潰れてしまう点でした。これさえなければもうちょっと皮付きキウイの味方ができたんですけどね。だって皮を剥く方が面倒なんだもん。

神は言っている。
輪切りにしなくてはいけないとは特に言っていないと(言ってるのか言ってないのか)

ちなみに皮つきで気になる食感の方、中に実が詰まっているときに表面を舐めたって参考にはなりません。それは実が下敷きになって皮の感触をしっかり教えてくれる状態だからです。切ってしまえば、実は下敷きの役割を果たさなくなります。キウイの皮は本当はふにゃふにゃです。
そしてキウイの皮はミカンよりも薄いので、口の中で一回噛めば実と分離してペラペラになります。ペラペラのものに圧力を加えるとほとんど反発を受けないままペラペラがクシュクシュになって小さくなります。ラーメンに入っているネギともやしが食感的な意味で許せない人でもなければ(昔の自分ですが)、許容できないものではないでしょう。

しかしこの食感の点からも輪切りは個人的にNG。
ふにゃふにゃでペラペラのものといえば紙です。細い紙のテープを輪っか状に繋げたものを想像するか、実際に用意してみるといいでしょう。輪っかを机の上に立たせて、上から押さえると、手で紙のふちの方に触ることになるので「固い」と感じるだろうと思います。輪切りにしたキウイの皮も同様です。もしくは、薄い皮に対して平行に歯を動かすので、歯の隙間に引っかかります。

写真みたいに何も考えずただしキウイということにも囚われない適当さでひとくちサイズに切っちゃうのが、手っ取り早い上に一番皮が気にならない切り方のようですね。

※case.728の映画録は、5段落でまとめる観賞済みの方向け参考記事を目指しています(No.18から現在)。なのでネタバレについてはあることもないこともご容赦ください。

3月29日『春、バーニーズで』

「お義母さん。僕は、いろんなことを諦めた結果として、瞳と結婚したわけじゃありませんから」

  • 『バーニー -皆が愛した殺人者-』をレンタルリストに加えようとして目に入ったのが本作(笑)。聞いたことのない西島秀俊主演作品で、TSUTAYA DISCASでは「メーカー廃版品のため品薄」と注釈がされてあったので妙に気になっていました。2006年にWOWOWで放送された単発のドラマだったようですね。あらすじから豊田監督の『空中庭園』みたいな内容(の男性版)かな?とは思っていて、そういう空気感は西島さん、似合いそうだ、として結局愛され殺人者バーニーより先に借りていました。
  • 原作は芥川賞の小説家・吉田修一の短編集より。ちょっと歪だけれど平凡な男がちょっと歪だけれど平凡な結婚をしてちょっと歪だけれど平凡な家庭を持って平凡な毎日を送っていたのだけれど、そのちょっとの歪さとちょっと歪な過去が日常に追いついてきたとき、なんていうかこう、人間が危うくなる、足を踏み外しそうになる、そういうとても‘小説’らしいお話。WOWOWの二時間ドラマというのを初めて観ましたが、本作はそこらの映画並みによくできていて、下手な映画よりはよほどきれいな仕上がりになっていたように思います。原作の力もあるのでしょうが、しかし小説的な空気感をこれほど丁寧に丹念に表現している作品には、昨今の民営放送では言うまでもなく、劇場でもなかなかお目にかかれるものではありません。惚れ惚れするような素晴らしい作品というわけでもありませんが、しかし掘り出し物という感じはかなり強かったです。テレビでもまだこんなの観られるんだ、というのはそこそこ鮮烈な驚き。
  • 本作のテーマは「ふとした時に、もうひとりの自分が別の場所で、もうひとつの時間を刻んで生きているような気がする」という、これは何なんでしょうね。ニュアンスについてでしかありませんが、自分にも覚えがあるようなないような感覚。「もうひとつの時間」というもの。これは過去に屠られた選択肢のこと?劇中では明確にそれが捉えられるような描写や表現はないものの、魅惑的なものであることは静かにしかし丹念に描かれ、劇中全体に一貫してどこか危うげな雰囲気を出させ続けています。
  • ともすれば、解釈によっては邪悪な誘惑とも取れるこの「もうひとつの時間」を、至極透明感があって、ある種の無垢なもののように表現し続けていることは本作最大の特徴ですね。もとい、透明な日常の中の小さな濁りとも取れるのに、ごみごみとして色づいて“濁った”日常の中の透明な点のようにも取れる。求めると苦しいけれど、頭の片隅から離れないもの。誰にでもある心の揺れ。その波紋の底に眠る「もうひとつの時間」。多くの人は自分のそれを観測せず、あるいは観測したことにも気づかずに生きていますが、ふと観測して気づいてしまったときに揺れは起こるのでしょう。気がつかずに過ごした微細な機会の積み重ねが人生とも言えるのかもしれません。
  • 確かに現役アラフォーくらいの日本俳優で、西島さんくらい本作の透明感と“濁り”にハマれる役者も他にそうそう思いつきませんね。山田孝之がいい線行きそうだけれどまだ若すぎますし、堺雅人では非日常感の方が濃く出てしまう。オダギリジョーが平凡な会社員……感動話でそれなら似合いそうだけれどとりあえずおかしい。「あんたもうちょっと食べた方がいいんじゃないの?」と顔を見て老婆心から声をかけたくなるような役者が西島秀俊。日常に疲れているのかいないのか、表情にそれが見えるようで見えない、隠しているわけでもないけど自然に塗りつぶされている、そんな真にリアリティのある平凡さが彼の得意技です。

3月29日『ユージュアル・サスペクツ

「カイザー・ソゼ!」

  • その男、カイザー・ソゼ!欧米裏社会を裏から(※表ではない)操る孤高のギャング。裏に通じる人間なら誰もが一度は名前を聞いたことがある。しかし誰も顔は見たことがない。近づく者は容赦なく殺す。怒りを買った者は家族や同僚までも皆殺しにされる。比類なき冷酷さと残虐性が一人歩きする生きた伝説。はたして彼は、カイザー・ソゼは本当に存在するのか、存在しないのか、どっちなんっだいっ!?(by中山)
  • 筋肉ルーレットは回さない(いやだ)。誰も顔を見たことのない裏社会のボスといえばジョジョ5部のラスボス・ディアボロを思い出します。つい最近映画名悪役(人類限定)まとめみたいなのに知能系トップファイブあたりに載せられていて、作品自体もどんでん返し系の秀逸脚本と聞いて飛びついた次第。劇中で問題にされるのは、6週間前にドラッグみつゆに関わっていた一隻の船が港で炎上したという事件の詳細。重要参考人(暫定)として挙がってきたのは、同時期に銃器強盗容疑で連行された足の不自由な男・ヴァーバル・キント。同じ容疑でいっしょに面通しされせられた4人の“常連(=ユージュアル・サスペクツ)”と彼はそれをきっかけに行動を共にし、密輸船を襲った疑いがかけられていた。しかし彼らに密輸船を襲わせた真の黒幕として、正体不明のギャング、「カイザー・ソゼ」の名がちらつき始めるというもの。刑事はカイザー・ソゼの存在を信じず、その名を口にしたヴァーバルの証言をすべて嘘だと推理した。
  • このあらすじの時点で、本作の仕掛けはすでに始まっていると言えます。本作のキモはヴァーバルの証言が嘘か本当か。ことによってはヴァーバル自身が騙されているのか。そしてその決め手となるのはカイザー・ソゼが実在するか否か。事件の全容を明らかにしながら、とかくカイザー・ソゼの実在について追究がなされていくのですが、本作はこの、全体の脈絡そのものがブラフであるという、非常に大胆不敵な脚本となっているのです。
  • カイザー・ソゼの伝説が真実が作り話か、そんなことはたいした問題ではない!“作り話”かどうかを考えなきゃいけないのはこっちだったのさ!というのが本作のどんでん返しであり、映画的なショー要素だったというわけです。正直騙されてかなり悔しい部類で、企画書だけ見せられたらふざけんなっ、てなりそうなんでけど、上のブラフを演出するために全く隙のない脚本を綴りあげているのですよ。二段オチまで網羅していて手落ちがまるで見られない。これが特に見ごたえのない“作り話”でそっちのオチも拍子抜けするようなものだったとしたら素直に憤れるのかもしれなかったのに。いやさ、最初の“オチ”にはちょっと拍子抜けするんですけれど、この拍子抜け具合がまた絶妙だったりもするんです。「あー、なんだそんな真相だったのか。まあこんなもんかなあ」と毒気を抜かせておいてからの鮮やかな大外刈り。あれ、おれ、どうして床で寝てるんだ……?
  • 本作が面白いのはこのどんでん返しの結果、「カイザー・ソゼが実在=ヴァーバルの証言が真実」という劇全体が構築してきた方程式が、「カイザー・ソゼが実在=ヴァーバルの証言が嘘」に、こうきれいに半分だけひっくり返ってまったく別のものになる、というところにあったのではないかと思います。N極とS極で色分けされた磁石が二つあって、それをどう機械に取り付けるかばかり議論していたけれど、いざ機械に取り付ける段になって実は片方の色分けが嘘だったので機械がまるごと別の仕事を始めた、みたいな驚き(まったく意味不明な例えに思える)。あの刑事さんはあんまり好きなキャラクターでなかったので感情移入していたわけではないのですが、彼同様「KOBAYASHI」を見た瞬間に「ちくしょう!やられた!」と思ったものです。

【参考】【悪魔か】映画界の歴史に残る名悪役まとめ【人間か】 - NAVER まとめ


今月からしばらくDISCASは月4枚までのプランを利用することにしました。
とか言いながら観賞ペースが落ちてる気がしないのは何故なのでしょう。ブログの更新より観賞済みが溜まっていく方が早いだと……。