case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

5月2日【映画録40『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』】

※case.728の映画録は、5段落前後でまとめる参考記事を目指しています。
ネタバレするかしないかは各記事の都合によってまちまちですので、しててもしてなくてもご容赦ください。

5月2日『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』

「弾を買ってくる。それでドレスを買う。いい?」


1.安定のCM詐欺(かと思いきや本国トレーラーの焼き回しだったので別の意味でびっくり)ながら異色臭を隠し切れないトレーラーにほくそ笑みつつレンタル。ティーンズな主人公二人がわりとのん気に拳銃ぶっ放して虫けらのように人を殺すあたりバイオレンスなのは間違いありませんが、アクションやスリラーなんて言われるとふざけるなって感じです。描写はちょこちょこエグくても、全体はもっとふわふわとした少女漫画風味の人間模様を描くもの。漫画と言うと語弊がありますか。カポーティサリンジャーのような文学小説じみた雰囲気でしょうか。主人公たちは18歳ですが内面はかなり幼く、それを甘くも辛くも捉えて表現していたため、よくできた思春期モノっぽくもありました。決して眩しくもなければ痛快でもない、ともすれば痛々しいとさえ思う、イレギュラーな青春譚といったところ。ジャンル分けしづらいところにありますが、とりあえずはいい作品です。ついでに個人的な好みとしては、同じくティーンエイジ・ガールズを取り上げた『ジンジャーの朝』と比べると、外連味にも溢れるこちらの方が好きかなと。


2.18歳のデイジー(シアーシャ・ローナン)とバイオレット(アレクシス・ブレデル)はルームメイト兼仕事仲間。学生かな、と思いきや、二人の裏の顔は裏社会の殺し屋。序列は下の方だけど雇い主には恵まれてて楽な仕事を回してもらえる。あるとき新作のバービー・ドレスを買うお金欲しさに請け負ったのは、どうやら頭のおかしいらしい男(ジェームズ・ギャンドルフィーニ)の暗殺。聞けば、二人を雇う組織と関わりのあるトラックを強奪したかと思いきや、自ら名乗り出てきた挙句に「殺しに来い」と挑発してきたという。殺してほしいならラクチンねと、二人は軽い気持ちで男の自宅へと乗り込んだものの、あいにく男は留守。まあ帰ってきてから殺せばいいか、と呑気に構えるバイオレット。呑気に構えすぎた二人はそのままカウチでうとうと→ぐっすり。目を覚ますと目の前にターゲットの姿。ようこそ我が家へ、さあ殺せと促されてさすがに混乱する二人。仕方なく目をつむって撃ちまくったら見当違いで弾切れの手違い。予備の球も実はええとごにょごにょ。あれあれ、二人はこのおっさん殺せるの?ていうかおっさんなんで死にたいの?戸惑いながら二人はおっさんにクッキー焼いてもらって食べたりミルクでくちひげ作ったり他の組織とドンパチしたりワンピースもらったりしながら、次第にたくさんの言葉を交わしていく……。


3.とりあえず押さえておきたいところとして、主役のバイオレット&デイジーがめちゃくちゃかわいい(笑)。上のあらすじですでに一目瞭然だと思いますが、実にポンコツ・アホの子まっしぐらなガールズです。序盤のすっとぼけたような雰囲気のうちは、彼女たちの危なっかしさにひたすらやきもきさせられるでしょう。「お嬢さん方、そいつ(銃)はオモチャじゃねえんだぜ。あぶねえからこっちへ寄越しな」と漫画のギャングみたいな台詞が本気で頭に浮かびかけるくらいです。『天使の処刑人』なんてダサカッコイイ邦題つけられちゃってますが、二人が天使であることだけは間違いない。


4.いや、これだけならまだ痛快ガールズアクションものへ発展していくのが規定路線だとも言えそうなんですけどね。本作はこの天使のように無邪気でありながら、ともすれば無知とさえ思うほど穢れの知らないデイジーと、強さの裏に臆病さと繊細さとを隠し持つバイオレット、それぞれの持つ傷や弱みまで含めて二人のことが心の底から愛おしくなる、そんな脚本で成り立っているのです。時の流れはとても緩やかで、それでもこぼれ落ちていかないものは何もないと思わせるような繊細な脚本。その下で少女の夢見るようなユーモアも忘れない。人道的で胸を打つような映画だと言うのも違う気がするんですよね。そういう意味では厳しく、そういう意味でもとても優しい映画だったんじゃないかと思います。


5.そのくせ脚本にまだ隠れた妙があるのも本作の真骨頂。主役二人とそれを取り巻く時間の流れにだけ焦点を当てることで、映画の表面はとても穏やかなものに仕上がっていますが、これを際立たせているのは裏にある時間の流れとの激しいコントラストだったりするのです。ターゲットが生きていることで二人は現在進行形で仕事に失敗し続けていることになりますし、そもそも言葉を交わしていることがかなりマズイ。また二人の請け負った仕事には実は組織間抗争の絡む要素も潜んでいて、気がつかないうちに二人は地雷原でサルサを踊っている(ていうか実はもう踏んでましたっていう)。こういう“別の視点や時間軸に意識を向けると物語がまったく違って見える”っていう作りの脚本は、それだけですでに奥行きが用意されているようなものなのですが、本作のようにコントラストとしてしっかりしているものを観ると目が覚めるようです。映画だとタランティーノの『パルプ・フィクション』などを思い出しますが、先に彷彿とさせられるのは日本文芸界の伊坂幸太郎でしょうか。


6.キャストの話もできないまま6段落目ですが、個人的に気に入ってしまったので本作のエンディングソングの紹介で締めくくります。ジャズシンガー、メメリー・ラッシュの歌う『Angel of the morning(朝の天使)』が採用曲。邦題はむしろこっちから取ったんでしょうか。新しい夜明けに歩き出したかのようなバイオレットとデイジーを象徴するかのようでありつつ、甘くやわらかくもどこかメランコリックなサウンドが本作を包み込むように流れていきます。


Angel of the Morning

Angel of the Morning



熱っぽくはないんですが、体の調子がアレですね。そもそも感想の書きやすい作品じゃあなかったですが、それ以上にふわふわしてるかもしれません。

ところで、何の気なしにアクセスログを見たら「728 霊的な意味」で検索して来てる人がいてちょっとびっくりしましたよ。
いえ、うちのは昔から使ってるペンネームが「七津八」なもんですから、そっから安直に数字化しただけで何も深い意味はないんですけど……なんかすいません。

もののついでだと思って自分でも調べてみましたが、本当に特に意味なさそうですね、728。
数秘術的には「8」にあたる整数らしいですし、その数字の出し方で一の位の数に戻ってくるあたり、ちょっと縁起のいい数だったりはするのかもしれません(ド素人)。あ、ちなみに7月28日にお祭りとかあったりもしません。強いて言えば、夏休みの宿題計画の破たんがほぼ確定となって自暴自棄気味に遊び始める頃合いでしょうか(今年は月曜日。親の目がなくなるタイミングなのでもう間違いないありませんね)。あとは江戸川乱歩の命日だとか、サクラ大戦のさくらの誕生日でもあるらしいですけど、そっち界隈ではお祭りとかあるんですかね?

7月28日 - Wikipedia