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case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

5月10日【映画録42『サプライズ』】

※case.728の映画録は、5段落前後でまとめる参考記事を目指しています。
ネタバレするかしないかは各記事の都合によってまちまちですので、しててもしてなくてもご容赦ください。

5月7日 サプライズ

「ミキサーで殺したわ」


1.他にもいろいろあったような気がするのにどうしてもミキサーがすべてになってしまってくやしいの_(┐「ε:)_


2.珍しく口コミから引っ張ってきてトレーラー未見。本当は同じアダム・ウィンガード監督の『ビューティフル・ダイ』が気になってたんですけれど、手放しでオススメできるのは先に作ったこっちの方だと聞きまして(ちなみに『V/H/S』の監督です)。内容は、定年退職して田舎に新居構えたパパンとママンのところに兄妹4人とその夫妻だの恋人だのがわきあいあいフルハウスの予感だったのに、アニマルマスクの謎の男たちが侵入してきて血のストレートフラッシュ(皆殺し)っていう、昨今一周まわって硬派な気もし始めるスプラッタスリラー(でもこの“侵入モノ”が海の向こうじゃ今流行り目らしい)。ですから軽い気持ちで観始めましたが、実際、軽い気持ちで観る分にはとっても掘り出し物でした。キーワードは“わりとグイグイくる構成力”です。


3.ざっくりしたあらすじは概ね上記だけで充分かと。ただし最初に殺されるのは、パパンとママンが引っ越す予定のおうち(まだ引っ越してない状態)の唯一の隣家に住んでいた壮年夫婦。殺人者たちは夜に紛れて忍び寄り、クマやネズミのマスクをつけていて、気づかれるより早く手際よく殺す。現場には必ず“You're Next”の血文字。明くる日隣の屋敷には老夫婦が越してきて、二人の引っ越し祝いと結婚記念日を兼ねて三人の息子と一人娘がパートナーを連れてやって来ます。なんか隣家がオーディオ流しっぱなしで様子がヘンだし、二階に誰かいるような気がしつつも、つつがなくディナータイム。芸術家に浮かれてる妹、アウトロー気味のねーちゃん連れたヤンキーの三男、奨学金がやばい大学研究員の次男、内面超攻撃的でクソガキこの上ないのに外面と体格はやたらいい気分の悪くなる長男、そして幸せな老夫婦。案の定根がアホタレで小物の長男と常々コイツにうんざりしてるイライラ次男との間で喧嘩が始まってしまい、盛りあがってるところ申しわけありませんが窓を突き破ってボウガンの矢が!「奇蹟のカーニバル! 開 幕 だ 」「90分枠のくせに10人やんなくちゃいけないんで、巻いていきましょうねー」


4.これだけなら、インパクト狙いでほぼ考えなしに被害サイドのキャストを大人数にして、あとは派手に殺しまくるだけの下品なB級作品と思われるかもしれません。いや殺しまくるのは間違ってませんけどね、わりと虫けらのように。ただ少なくとも本作にとってこの“10人”は必要だったからこそ10人。厳密には12人、プラス加害者サイドの3人。総勢、構成の面から見ると緻密な計算づくであることが臭ってくるのです。無駄がまったく感じられない。殺すときはさくっとなかなかスタイリッシュに殺します。が、一つ一つの殺しに意味や効果が複数ついて回る。単純に殺される順番だけ見ても、意外性もある上で観客の煽り方として効果的なように堅実にできているのです。最初はわりとどうでもいいやつで開幕の鐘を鳴らし、重要そうな人は長く生き残るのかと思ったら続けざまにあっさり殺す。また、こういう映画ではよく“足を引っ張る役”がいると思うんですが、それっぽいキャラがさっさと死んだり行動不能に陥ったりもする。どうやらぼくたちは重要そうなキャラが死ぬと予測がつかなくなって軽い絶望感を覚えますし、足を引っ張るイライラ要員が死ぬと溜飲が下がると同時に座ろうとしていた椅子を取られたようなもやもやした感じを味わって混乱してしまう。この刺激的な当惑を絶妙なテンポでしかけてくるのです。おかげでグイグイ引き込まれる。


5.さらに後半にて覚醒者現る。狩る側が狩られる側に。被害者サイドに一人手練れが混じっていたという展開。人によっては嫌いなタイプの意外性かもしれませんが、少なくとも序盤から伏線はありましたし、よくある元軍人設定とかではないので快進撃が始まるわけでもありません。むしろ微妙に勝てる見込みがあるのかないのか不安でハラハラさせられるあたりがまた絶妙でした。また手近な道具を駆使して相手を撃退するというあたりが、最近の洋ゲーチックでもあって、「家に強盗が入ってきたらどうするか」みたいなことを考えるのが大好きな少年心もくすぐられます。右手にミキサー、左手にもミキサー、これで最強 卍(`・ω・´)卍<コンセントドコー?


6.またこういう特殊なキャラクターが混じってると、それを元に変に風呂敷を広げ始めてしまうってことはよくあるんですよね(実は彼女は国家を裏切ったスパイで、刺客の本命はそっちだったとか)。本作はそこは大人しくしている。過激なバカ映画ではないんだってスタンスがしっかりして見える。もしかそっちを期待してしまった人はちょっと物足りない“真相”ではあるかもしれません。確かにあれで昼ドラ火サス展開は日本人からすると拍子抜けかもしれない。とはいえ序盤からそっちの伏線もしっかり張られているおかげで脚本の完成度としては好印象。それでもまだあれだったらまあ、ミキサーで御破算願いまして(笑)*1*2


7.いや、実際ちょいちょいお茶目なあたりは、控えめさ加減から言っても良質な部類かと思います(なんでゴルフスイングなんだよとか、実はまだベッドの下にとか)。全体的にまじめにやってるだけにシュールに映るところもあるおかげで二重の愉しみ方ができる。刺客側が殺しを愉しんでいる節もありますしね。アニマルマスクの不気味さなんか最たるもの。「ドヤァww怖いやろww」「いやアンタそれ息しづらそうwww」そんな軽い気持ちで観てたら掘り出し物、という感じで言えばなかなかの良作でした。なぜか2回観たくなる。

*1:それとなく“Will_it_Blend?”貼っときますね。

*2:こわ…(心底)