読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

5月12日【映画録43『V/H/S ネクストレベル』】

※case.728の映画録は、5段落前後でまとめる参考記事を目指しています。
ネタバレするかしないかは各記事の都合によってまちまちですので、しててもしてなくてもご容赦ください。

5月10日 V/H/S ネクストレベル

「奇妙な映像を見たの。作り物よね?」


1.前回の『サプライズ』が面白かったので、同じアダム・ウィンガード繋がりで『V/H/S/2(原題)』を借りてきました。前作である『V/H/Sシンドローム』も非常に興味深い作品でしたし(【映画録21】参照)、短編オムニバスの小粒さゆえにか、5本じゃ物足りない、もっと観てみたいと考えてはいたのでした。反面、食傷になりかねないかとか、劣化していたらどうしようとかで躊躇しておりましたが、そっちは完全に取り越し苦労。前作のシンドロームが面白いと思えたなら、このネクストレベルは間違いなく必見級です。これぞまさに正当進化。いやさ、シンドロームが玄関、ネクストレベルでようやくメインスペースに至ったと言っても過言ではないでしょう。


2.様式もまた前作を完全に踏襲。全体のメインラインに当たる脚本が存在し、そこの登場人物たちが怪しいVHSを次々に再生していくというもの。本作の彼らは私立探偵とその助手で、音信不通の男子学生の様子を見てきてくれと、その母親に依頼され、彼の借家に忍び込む。家の中には複数のモニターと大量のVHSが散乱しており、学生の姿はない。ノートパソコンにはその学生と思しき少年の自分撮り映像が映し出されており、それによるとどうやらこの学生は蒐集した裏ビデオを観賞するのが趣味だったようだ。そのビデオの方を見てみれば何か手がかりがあるかもしれないと踏んだ主人公たちは、散乱するVHSを片っ端からデッキに挿入していく。再生が始まり映し出されたのは、とても現実とは思えない怪事件、怪現象の、偶発的な実録映像の数々だった……。


3.一つ断っておけば、短編として観られるひとつひとつの作品は、どれもそこそこチープなものです。POV形式だからどうにかリアルに思えなくもないという程度のもの。前作を観た上で本作に臨む人にとってはこの上なく野暮な話かもしれませんが、今から本作を観る、もしくは前作を観ようとしている人にはお節介を焼いておきたい気持ちがあります。“VHSの再生”として映し出される本作内の短編は、確かに作り物然としているところがあります。メインラインにいる探偵の助手も、こんな映像は作り物だろう、と口にしています。しかし、この助手の言葉にこそ本作の真髄があるのです。


4.ビデオを再生することで何かが起きる。一つ一つのビデオは作品であると同時に、本作全体を繋ぎ、成り立たせる装置でもある。この入れ子的な構造によって、劇中で再生される“裏ビデオ”が作り物か実録映像かは、正直たいした問題ではなくなっているということなのです。作り物然とした裏ビデオを馬鹿にしようとも、愉しもうとも、いずれにせよ観ている、ということにおいて僕たちとメインの探偵たちの目線は完全に重なってしまう。本物か偽物かもわからない裏ビデオを観ることによって彼らが味わう不気味さや“嫌な気持ち”を共有できる構造になっている。前作の感想のときは「没入」という言葉でそのことを表現しましたが、この“没入”こそが本作というか本シリーズにおける隠された面白さだと思うのです。いやはや、ホラー映画を観て夜が怖くなったのは久しぶりですよ。だってこの『V/H/S』という作品もまた、少年の蒐集していた裏ビデオの一つという設定なのですから。


5.という本作の特色をですね、掴みやすいのは実は『V/H/Sシンドローム』の方だったんですよ。あっちは、裏ビデオとして正直パンチにかける、と思えるようなのも混ぜつつ、一作一作が程よいインパクトで、わりと印象に幅のある作品群だったんです。その“無造作”に集合されてる感じが、まさに“積まれたビデオを片端からデッキに突っ込んでいる”感覚を味わえる演出の一つになっていた。本作は作中作の個々がパワーアップした分、そのせいで全体的に一体感のある印象が前作よりも薄れてしまっている嫌いがあります。シリーズファンとしては愉しみ方は既知なので個々がパワーアップしてくれた方が嬉しいですが、いきなりこっちから観てしまった人は同じ感覚を味わいにくいかもしれません。なので、これから観てみようという人には、両方借りてきてシンドロームを先に再生するよう強くお勧めしておきます。正直麻薬系の映画でもあるので、耐性ついてから前作観ても微妙でしょうしね。


6.いやいや、個々の作品自体が別に面白くなくていいし、実際面白くなかった、と言いたいわけでもありません。チープなところもありますが、それ以前に実力派揃いの楽しい作品が集まっています。短編=小粒で観る側の敷居を低くしやすいというのもあるでしょう。個人的にはエヴァルド・サンチェス&グレッグ・ヘイルの『A LIDE IN THE PARK』(ゾンビのやつ)が好きですか。ゾンビ視点でPOV(頭上カメラ)って自分が襲う側だからか、むっくり新入りが起きあがってくるのに緊張感なかったり終始すごくシュールで新鮮味がありましたね。頭上カメラつけて屍肉に喰らいつくもんですからめっちゃウゲゲーってなりますけど。誕生日パーティとかいう悪ノリ展開は垂涎モノ。

7.あ、『SAFE HEAVEN』(新興宗教の)は面白すぎるので別格です。誰が監督かと思ったら『ザ・レイド』のギャレスですよ。POVやったことのない監督の方がめちゃくちゃなものを作ってくれて面白いって、なんかこういう法則性ないでしょうか(笑)

  • と言いつつ最後の『SLUMBER PARTY ALIEN ABDUCTION』があんまり好みでは。いやいろいろある中で被らないネタを入れてきてくれたのは嬉しかったですが、トリを飾るには力不足だった感じです。『SAFE HEAVEN』の後に入れるには硬派すぎた嫌いも。


8.期待していたウィンガードの『CLINICAL TRAILS』は普通によかったです。短編として綺麗にまとまっていましたし、観せ方もとんがらずにそこそこ個性的という素晴らしいバランス感覚。パンチは小さいですがジャブとして先鋒を切らせるにはピッタリの仕事ぶりだったかと。個人的にはメインラインである『TAPE49』も、前作に引き続き彼に撮ってほしかったように思います。4段落目に書いてあることは、メインのパンチ自体が小さかったせいという気もするので。


9.余談ですが、あの学生は前作の不良グループの一人?最初はそうだと思い込んでいたのですが(彼は“前作”にあたる『TAPE56』を持っていましたし)、しかし本作メインラインのタイトルは『TAPE49』。あれぇ、時間軸ぅ?ていうか他に何も証拠がないので思い違いではないかと考え直した次第。前作の顔ぶれをちゃんと覚えてればよかったんですけどね。ああ、なるほど、DVDを買えと……。