読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

5月23日【映画録46『死霊のはらわた(2013)』】

※case.728の映画録は、5段落前後でまとめる参考記事を目指しています。
ネタバレするかしないかは各記事の都合によってまちまちですので、しててもしてなくてもご容赦ください。

5月20日 死霊のはらわた(2013)

「小さなベイビー、お別れの時間よ」


1.あれですね、一過性のマイブームかと思っていましたがそれ以上に、自分って西洋の“悪魔”が好きなんですね。中二病的な意味でもなければ信教的な意味でもありません。ゾンビ映画が好きな人のゾンビ愛とはまたどう違うかわかりかねるのですが、異国の文化風土とか、民俗的なくくりの中で“悪魔”というモチーフが扱われる現象自体に魅力を覚えるみたいです。だからむしろ“悪魔”であれば実は何でも良かったりしますけど、そのうちでも典型的特徴として認識してるのは「狡猾な悪意」と「魂をさらう」あたりですか。和製ホラーの“悪霊”も実は描写の仕方次第で共通するところが多くなったりもする代物なのですが、『呪怨』の伽椰子のように“狡猾”でもやっぱりそのニュアンスが違います。たぶん“悪魔”は元は人間だった“悪霊”と違って生まれついての悪意そのものですから、あれですね、ドヤ顔が透けて見えるんですねきっと。ドヤ顔だけでなくあいつらは喜怒哀楽のすべてに富んでいて、悪意しか持たないことを除けば超常的なくせに非常に人間臭い。だから面白いのでしょう。


2.と、前置きで一段落使っちゃいましたが、本作『死霊のはらわた(2013)』はかつてスプラッタブームを巻き起こす発端となった1981年のサム・ライミ監督同名作品のリメイク版(ないしリブート)。山小屋を訪れた5人の男女のうち1人に悪魔が憑りついてじゃんじゃん殺すんじゃー、と非常にわっかりやすいスラッシャー系悪魔憑きムービー。監督はこれが長編初作品だったそうですが、ライミのバックアップもあったおかげか非常にアップテンポで楽しい“悪魔”の映画でした。ていうかそれと同時に懇切丁寧なスプラッタという、さらに楽しい要素がこれでもか☆ってほど(吐きつつ)……ていうかですね、単にグログロのゴアゴアだったんじゃなくて、痛覚を持って生まれたことを後悔させられましたから。


3.悪魔に憑りつかれる予定のヒロイン・ミア(ジェーン・レヴィ)は一回離脱に失敗して心筋梗塞まで行ったことまである末期のヤク中。友人たちの協力の元、人里離れた山小屋にこもり、母が死んで以来疎遠だった兄さんまで呼び寄せて、今度こそ本気でやめるぞと意気込んでいた。が、実はその山小屋、みんなで集まって遊ぶのにも昔から使っていたのだけれど、しばらく使わないうちに悪魔憑きの女が住みついて地下で滅茶苦茶儀式した挙句、悪魔祓いまで同じ地下室でされてしまっていた(人の家で何をしてくれているのか)。儀式場には猫の死骸がそのままだったから、離脱症状で神経過敏になってたミアが腐臭がすると訴えて床下が開かれる。地下室で見つかったのは黒ビニルと有刺鉄線で包まれた不気味な物体。中身はなんと悪魔(デーモン)を呼び出す方法の書かれた魔術書だった。悪魔祓いした人たちが封印して、ページもぐちゃぐちゃに塗りつぶして「読むな、書くな、唱えるな」ってめっちゃ警告してるのに、それでも封印解いて元の文字を浮かせて口に出して読んじゃったメガネ君(高校教師。主人公兄妹の友達)。途端に森の奥から押し寄せてきた気配がミアに飛びかかり、ミアはその何かに追われ、追いつかれ、かくして惨劇の幕が開けるのでした。


4.この導入からそうなんですが、とにかく徹頭徹尾わかりやすくて非常にテンポがよかったです。緩急をつけるところはつけて、じっくり怖がらせる部分はじっくり、ねっとりゴアゴアな部分はあのやめてくださいしぬしぬいたいいたいいたっちょっまっま、まだ!?みたいな執拗な感じで。被害者5人っていうか厳密には4人なのに、【映画録44『ノー・ワン・リヴズ』】のときみたいな“サプライズシンドローム”はまったく感じませんでした。快速です。じっくり怖がらせる部分もホント観せ方からじくじくしてて、観てるこちらはドキドキしっぱなしだった次第。悪魔憑きモノ云々以前にとても楽しいホラー映画だったのです。


5.悪魔憑きモノは必ず“祓い方”がセットだからこそ展開が早いというのもありますよね。呼び出し方の書かれた本なんかがあるなら、還し方だってそこに載っています。えてしてそれがまた古代魔術っぽい要素を含んでいるのも悪魔憑きモノのチャーミングポイントですね。本作では“焼く”か“埋める”か“バラバラにする”か。いずれにせよ悪魔の宿主ごと殺さないといけないという鬼の選択肢。しかもどれを選んでも当然、悪魔の野郎が憑りついてる女の子の顔と声で「コロサナイデー」って訴える展開が来るわけですよ。さすが悪魔、汚いな悪魔、俺たちにできないことを平然とやってのけ(中略)るゥ!この狡猾さの裏で笑ってる顔が透けて見えるのが悪魔憑きモノの醍醐味だと思っています。


6.残念ながら本作は、秀逸なゴア表現(なんだそれ)を除けば、凡百のスプラッターという枠に収まり切らない作品とまで支持されるものではないだろうと思います。リメイク元のライミ監督作は未体験な僕ですが、一大ムーブメントを巻き起こすほどのものといえば多かれ少なかれセンセーショナルな出来栄えだったということを考えると、比較して不満に思われるのもこれは当たり前だと思います。端的にいえば、本作は怖くないので。もちろん見慣れてる人間の意見ですが、余計な色眼鏡をかけずに観れば、本作は普通に楽しいエキサイティングな映画でした(コミカルな要素はありません)。お友達と一緒にぎゃあぎゃあ言いながら観賞しましょう。


7.ちなみに僕は本作のメガネ君がお気に入り。自分が悪魔を呼び出しちゃったのをわりと早々に自覚して、ありがちな現実逃避もせずに立ち向かっていったのには好感が持てます(代わりに現実逃避し始めた兄者に説教垂れはじめたのをお前が言うなと言いたい人はいるかもしれませんが、彼が言わなくて誰が言うのか。言わなくても死にそうなのに)。何より、責任を感じてなのか何なのか、おっそろしくタフでしたからね。彼がいい人善良な一般市民である限りは、一度襲われたらハイサヨウナラとなるのがパターンだと思うのですが、彼は何度襲われても死なない。襲われるとひいひい言って何にもできないし結局重傷を負うのだけれど死なない。最後の最期には悪魔に一矢報いて逝くかっこよさ。もう充分だ、お前はよく頑張った、と思っていたら因果応報は死んでも終わらず。……ていうか元をただせば地下室に魔術書放り出していった悪魔祓いたちが悪いんじゃないかこれは。あれで封印したつもりなのかよ。焼いてダメでもせめて埋めときなさいよ!それこそ大学教授なんかの手に渡ったら、当然のごとく読むし書くし唱えるでしょうしね。