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case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

6月7日【映画録51『ヒューマン・レース』】

※case.728の映画録は、5段落前後でまとめる参考記事を目指しています。
ネタバレするかしないかは各記事の都合によってまちまちですので、しててもしてなくてもご容赦ください。

6月3日 ヒューマン・レース

「レースを拒めば死だ」


1. 生き残るのはただ一人。二周遅れれば即死亡。矢印に従わなければ即死亡。コースから逃げ出したら即死亡。“草”を踏んだら即死亡。死にたくなければとにかく“走れ”!あるとき無作為に選ばれた100人規模の人間たちが強制的に参加させられた理不尽なデスレース。何の特殊な仕掛けもないコース徒歩で何週もするという斬新な舞台設定において、たった一名の生存枠を目指し、命がけの“駆け引き”が繰り広げられたりられなかったりする!この極限を走破するのは誰だ!?


2. 普段の観賞ペースではB級までなかなか手を伸ばせない僕でも、「ほーれ、クソ映画だぞーぅ^p^」と上の弟くんが楽しげに持ってきてくれたら、そりゃあ観るしかありません(笑)。“低予算でもよくできている映画”ならいくらでもいけるんですけどね。どこに力を注いでるんだと終始ツッコミを入れたるなるようなのもたまにはいいじゃない(お友だちと観たいわ)。いやしかし本作、映画好きの弟くんが自信満々で持ってきてくれただけあって、低予算での大暴投ぶりは確かに笑えましたです。もしかしたらわりと真面目に作ったんじゃないかと感じ取れるあたりも切なさが加味されてよりシュールっていう(^×^;)


3. レースの参加者は全員、ある街のとある区画に同じ時刻に居合わせただけの人々。突然空が白く光ったと思ったら、次の瞬間刑務所なのか学校なのかよくわからない施設の屋外通路に立っていた。どこだここは、周りにいる人間は誰だ、と混乱していたら頭の中に声が響いてくる。声は一方的に告げてくるのは上述したレースのルール。誰も状況が理解できない中、一人の女性がはずみで“草”の生い茂る道の外へ出てしまう。途端に女性の首から上が木端微塵。悲鳴を上げて人々は走り出す。慌ててまた草を踏んだ人の頭も木端微塵。設置してある矢印から逆走した人の頭も木端微塵。やがて人々は頭の中の声に従わなければ頭が木端微塵になることを悟り、矢印に従って走り出します。ちなみに最初に死んだ女性は、白血病で一回死にかけたところを自前のメンタルパワーで完治させた奇跡の人で、これから新しい人生が待ち受けているはずだったんだぜってことを冒頭10分くらい使って語られたばかりだったんだぜイエー('∀')/~


4. ちなみに主人公はもちろんその女性じゃなくて、戦場で片足一本失ったところを別部隊の人間に救われた退役軍人さん(以下いっぽんだたらさん)と、その救った経緯で腐れ縁の友だちになった身体障害者児童施設の副所長さんのコンビ。この二人は非常に冷静かつ人道的で、怪我をして走れなくなった中国人姉弟(すごいウルサイ)のために助けを呼ぼうとしたり、誰も“二周遅れになったら死亡”のルールに引っかからないように全員足止めした上で力を合わせてこの理不尽なレースそのものを打ち破ろうとしてくれます。まあもちろん、そんなにうまくはいかないんですが。むしろこの二人の友情と善良な心意気は脚本にいいように利用され、身体的弱者であるかに見えるいっぽんだたらさんがスタイリッシュ仇討ちに燃えてしまう運びとなります。陸戦用いっぽんだたらツヨイ!ハヤイ!コワイ!どう見ても三本足です。そりゃ二本足が勝てるわけありませんて。


5. 力を入れる場所がおかしいと先述しましたが押さえるところはわりと押さえられている本作。デスゲームにおいて“無作為の人選”というものがどう影響するか、というのは『GANTZ』で御馴染みですが(そういえば頭Bomb!もGANTZですね)、本作もそこは妥当な構成。また「草を踏んだら死亡」というユニーク(ただし意味不明)なルールは、たいした仕掛けもないコースの中で殺人装置として最後までスマートな活用がされていますし、「二周遅れたら死亡」のルールのおかげで、トップランナーが望まざるもトップキラーにもなって指名手配犯のような扱い(dead or dead)になっていくという展開も白熱します。問題は、盛大に配分がズレていることですけれど。予算とか尺とか諸々のリソースとか。先述した白血病の女性のくだりなどは一番最初の顕著な例にして序の口だったりします。力を入れる場所というより力の入れ具合というべきですね。押さえる“ところ”を押さえておけばいいというものではないっていう……。


6. 極めつけはやっぱりあの聴覚障害カップルの痴話喧嘩ですね。“カップル”“痴話”って言っちゃうとおそらく殴りかかってくる牛女さん(いっぽんだたらさん命名)の次第に壊れていく様子は真っ当な意味で“良い”のですが、いかんせん何やらよくわからない力の入れ方で、挙句に話がダレるという始末。カップルはデスレースのことを常に意識してくれてはいますが、スタッフの頭の中では“デスレース”の方はどうでもよくなっていたとしか思えません。「白熱していくデスゲームなんかより俺は人間同士のなんじゃらもんじゃら複雑なアレソレをこの極限の状況と対比させて描き切るぜぃ!」って心意気が評価できる分非常に笑わせてはいただきましたが。


7. 僕はこういう作品のオチにはそんなに期待しない方だったりします。驚かされることはあってもがっかりすることはない方です。しかしながら「あんたら(スタッフ)、予算ここに使い切っただろ」とはあのCGテンコ盛りのラストを見せられて言いたくならないわけがありませんでした。変な動画演出入れてる余裕があったらもっとゴア表現ちゃんとしなさいよォ!(次第に高慢)とかと同じように。しかしながら臆さず立ち向かっていったいっぽんだたらさんはカッコよかったですね。のその後の雄姿が無性に気になります。「エイリアンvs三脚いっぽんだたら」ってやってくれても、僕は困らないんですよ?