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case.728

映画とお人形ばかりで恐縮です

6月13日【映画録53『オンリー・ゴッド』】

シリアスアレルギーとだけは付き合ってらんないよ…(;´×`)

「だけは」と言いつつ付き合ってらんないと思うものは昔から人一倍多い僕でもあります。
とりあえずネットだから声が大きく聞こえるってだけのヒステリーは全部ですかね。
なんでもすぐ「誰得」とか言っちゃうのはちょっと…('_';)

今日の映画録とは関係のないボヤキです。



※case.728の映画録は、5段落前後でまとめる参考記事を目指しています。
ネタバレするかしないかは各記事の都合によってまちまちですので、しててもしてなくてもご容赦ください。

6月6日 オンリー・ゴッド

「俺が来た理由、分かるな?」

1. アシッドハウス*1やアシッドコアは好きですけれどアシッドなムービーはいかが?強烈な映像体験とか賛否両論とか騒がれているとそれだけでも俄然手を出したくなってしまうタチです。基準はいつだって賛か否かじゃなくて好きか嫌いかなんですけどね。自分はこの現実が溶けて引き延ばされていくかのような特殊な体験を好きになれるかどうか。ていうか賛か否かでいえば特殊性が実現できてる時点で“賛”ですよね。その上で僕は、本作自体はあんまり好きになれなかったですねえ。映像じゃなくて設定のせいかもしれないですが。


2.(あらすじ)舞台はバンコク裏社会。アメリカ生まれのジュリアン(ライアン・ゴズリング)はボクシングクラブを経営しながら家族ぐるみの麻薬商売を裏でやっている次男坊。ある日彼のロリコン兄貴が16歳の立ちんぼを暴行して殺した“罪”でぐっちゃぐちゃに殺される。これを聞いてブチ切れたのは密売組織の首領でモンペのママン、クリスタル(クリスティン・スコット・トーマス)。ジュリアンはこのママンにケツを叩かれて、辛気臭い顔してるヒマがあったらとっとと兄貴の仇とってこいや!とパシられちゃう。そんなの兄貴の自業自得やん、殺された娘や家族の身にもなってみろよ…と思いながらもジュリアンはマザコンなので言い返せず、渋々仇を探し出す。しかし兄貴をジャッジメントしたのは実は、裏社会で仮面も付けずにジャッジ・ドレッド(ソードマスター)やってる超つええ元警官のオッサン(ヴィタヤ・パンスリンガム)。当然そんなのに刃向ったらどうなるかってわかるよね?って言ってるのにママンったら聞きゃあしなんだから……。


3. 脚本らしい脚本は特にないと言ってもいいしょうね。長男を殺されて逆恨みした麻薬密売一家があらゆる面で一枚上手のソードマスターのオッサンにひたすら返り討ちにされる話だと思っていれば充分だと思います。そんなドラマ性のない脚本の上で間延びさせた映像が淡々とつぎ足されていく感覚には、『コズモポリス』や『ホーリー・モーターズ』を彷彿とさせられましたね。しかしあの二作よりもはるかにワンシーンが引き延ばされていくような感覚が強かったように思います。伸ばし切られて常にぷつっと切れそうな緊張の上に僕らは座らされる。にもかかわらず、その映像にはやたらと極彩色やゴア表現が踊っていて、ある種の暴力じみたものを感じさせられる。現実と夢想も混ざる。強い酸で体のどこか曖昧とした一点から徐々に溶かされていくような、ゆっくりとした暴力。ゴールド・エクスペリエンスがブチャラティを殴ったときのあの序盤の能力は一体どこへいったのか教えてジョジョファンの人(似てるけど関係ない話)。


4. とはいえこんなまさに“自分の感覚の方が暴走しているのではないか”と思えるような映像で成り立っている本作は、そんな奇妙な作品として完成されているのかもしれません。ただしこれが90分枠といえど脚本による牽引力には頼らないままほとんどぶっ続けなので、なかなか体力を持っていかれますね。僕なんかは終わってからしばらくモニターを見るのが嫌になりました(笑)その点で好きになれないと言ってもいいのかもしれませんが、そういうわけでもなく。やっぱり設定が苦手なんですかね。


5. 裏社会という舞台設定のおかげであんまり考えなくてもいいようにはなっていますが、自前で正義を実行しちゃうジャッジ・ドレッドなキャラクターには何かしら人間臭い悲喜こもごもがないと、僕の場合は好きになれない傾向にあるようです。本作のその位置にあるおっさん・チャンはしかし本作の象徴として“神”の位置にあります。タイトルの“オンリー・ゴッド*2”です。実際劇中でも常に超然としたキャラで、実質的にも負けイベント戦専用のチートボスです。あくまで主人公はジュリアンなので、彼目線で見たときにチャンがGodであることはまったく当然でなくてはいけないというのはわかるんですけど、それにしてもチャン刑事の存在感が強くてそっちに感情移入しそうになる分、彼をあくまで“神”の位置に立たせる本作には反発を抱いてしまうのかもしれません。


6. しかし作品に対するその嫌悪感をひとまず置くというか、チャン刑事を純粋に偶像として見直せば、これがめちゃくちゃシビれるオッサンではあります。見た目は白襟の黒いポロシャツ来て焼酎が好きそうな小太りで禿げのおっちゃんなのですが(一部偏見)、それがめちゃくちゃ強いというだけでも単純にかっこいいですね。得物は一途に反りのないポン刀みたいな直刀一本で、アクションは殺陣を演じるでもなく一撃必殺。しかも刀は背中から出てくる。抜いてないときの姿を見る限り絶対そこには仕舞ってないんですけど(微妙に猫背だし)、ジャッジメントタイムには「シュラァァァン」なんて漫画じみた効果音と共に襟首から抜き身で出てくるのです*3。そしてたとえ刀を抜かず、ボクシングのタイマン勝負を始めてみてもこれが一発も食らわない。ガード不要でカウンターを入れていく。32歳のライアン・ゴズリングが赤子のように転がされる…。


7. ジャッジメントタイムにおける容赦のなさもまた、シビれるっていうか震えが来ます。容赦はないけれど必要以上の裁きも下さないんですよね。相手の罪の絶対量に対して平等に裁きを下す。その機械じみた真摯さが冗談抜きで怖い。まさにGod。これは怒らしたらアカン人やで…。

*1:アシッドハウス(音楽)がわからない人用。詳しい人と喧嘩すると勝てません(((^×^;)

*2:原題は「Only God Forgives」で“唯一神は赦す”と訳せます。“赦し”とは裁きの後のことを指すので、やっぱりチャンはGodでしょうね

*3:効果音がやたらコミックリリーフなのもさりげなく効果的な非現実感